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「NASAでは小便の色は同じだ」——この一言が、すべてを物語っている。
1960年代、宇宙開発競争でソ連に後れを取っていたアメリカ。その焦りの中で、NASAは致命的な「非効率」を抱えていた。優秀な人材を、肌の色と性別だけで排除していたのだ。本作『ドリーム』は、その愚かさを痛快に暴く。差別は道徳の問題ではない。組織にとって「損」なのだ——そう気づかせてくれる、すべての働く人への最高のエールである。
🎬 予告編
📌 この作品を3行で
この作品を3行で
- NASAの宇宙開発を支えた3人の黒人女性の実話
- 差別という「非効率」を実力で打ち破る痛快さ
- ファレル・ウィリアムズの音楽が最高に気持ちいい
作品情報
- 作品名:ドリーム(原題:Hidden Figures)
- 公開年:2016年(日本公開2017年)
- 監督:セオドア・メルフィ
- 上映時間:127分
- 出演:タラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイ、ケビン・コスナー
📖 NASAを支えた「隠された人物たち」のあらすじ
1961年、バージニア州ハンプトン。アメリカはソ連との熾烈な宇宙開発競争の真っただ中にあった。NASAのラングレー研究所では、ロケットの打ち上げに欠かせない複雑な計算を行う黒人女性たちのグループが存在していた。その中でも天才的な数学の才能を持つキャサリン・ゴーブル・ジョンソン(タラジ・P・ヘンソン)は、白人男性だけで構成されていた宇宙特別研究本部に抜擢される。
しかし待ち受けていたのは、「有色人種用」のトイレまで800メートルを走らされる日々だった。同僚のドロシー・ヴォーン(オクタヴィア・スペンサー)は管理職の仕事をこなしながら昇進を認められず、メアリー・ジャクソン(ジャネール・モネイ)はエンジニアになるための学校が「白人専用」という壁に阻まれる。それでも彼女たちは、自らの能力と不屈の精神で、アメリカ初の有人宇宙飛行という偉業を成し遂げていく。
✨ 『ドリーム』の魅力——差別は「損」だと教えてくれる映画
ここがすごい!
- 三者三様の闘い方——感情の爆発、知的交渉、リーダーシップ
- ケビン・コスナーの「率先垂範」——理想の上司像
- 科学という合理性が差別を打ち破る痛快さ
三者三様の闘い方——どれも正解で、どれも真似できない
本作の白眉は、3人の黒人女性がそれぞれ異なるアプローチで差別の壁を突破していく点にある。
キャサリンは「感情の爆発」だ。日々積み重なる理不尽——800メートル先のトイレまで雨の中を走り、戻れば「どこにいた」と咎められる。その我慢が限界を超えたとき、彼女は上司に向かって魂の叫びを爆発させる。「昼も夜も犬のように働いてるのに!」——計算された戦略ではない。純粋な怒りが、無自覚だった周囲の心を揺さぶった。
メアリーは「知性としたたかさ」だ。エンジニアになるには白人専用の学校に通う必要がある。彼女は法廷に立ち、白人男性の判事にこう訴えた。「私を高校に入れてくれたら、あなたは後世に名を残せるわよ」——相手を論破するのではなく、自尊心をくすぐる。敵を味方に変える、見事な交渉術である。
ドロシーは「キャプテンシー」だ。IBMのコンピュータ導入で自分たちの仕事が奪われると察知した彼女は、仲間全員にプログラミング言語を習得させる。そして異動の話が来たとき、こう宣言した。「1人では行かない。全員で行く」——個人の成功ではなく、コミュニティ全体の未来を見据えた真のリーダーである。
ケビン・コスナーの「率先垂範」——こんな上司が欲しい
ケビン・コスナー演じる宇宙特別研究本部の責任者アル・ハリソンは、本作のもう一人の主役と言っていい。彼は最初、差別に無自覚な「普通の白人男性」として描かれる。キャサリンがトイレのために消える理由すら知らない。
だが、キャサリンの魂の叫びを聞いた彼は変わる。ハンマーを手に取り、「有色人種用」と書かれたトイレの看板を叩き壊す。そして言い放つ——「NASAでは小便の色は同じだ」。口先だけの理解ではない。自ら制度を破壊する行動で示した。これこそが「率先垂範」であり、リーダーのあるべき姿だ。
科学という合理性が差別を打ち破る——「差別は損」という視点
本作が秀逸なのは、「差別をやめよう」という道徳的な説教ではなく、「差別したら損するよ」という合理的な視点で描いている点だ。
考えてみてほしい。アメリカはソ連との宇宙開発競争で負けていた。一刻も早くロケットを飛ばさなければならない。なのに、天才数学者をトイレのために800メートルも走らせている。機密情報だからと書類を黒塗りにして渡している。会議には出席させず、的外れな方針が決まり、計算のやり直しが発生する。これは差別の問題以前に、組織として致命的な非効率だ。
科学という合理性の前では、肌の色も性別も意味を持たない。黒板にチョークを走らせるキャサリンの前で、白人男性たちは言葉を失う。数式に人種はない。結果を出せる者が正義——その痛快さこそが、本作の最大の魅力である。
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こんな方におすすめ!
- 職場の理不尽に負けそうな、すべての働く人
- 宇宙開発・科学技術の裏側に興味がある人
- 痛快なサクセスストーリーで元気をもらいたい人
😅 ここが惜しい…
ここが残念…
- 史実からの脚色が大きい(トイレの件は実際には既に撤廃済みだった)
- 邦題「ドリーム」で原題の二重の意味が消えた
- 道徳的メッセージが前面に出すぎる場面も
史実との相違——トイレ問題は脚色
本作で最も印象的な「800メートル先のトイレ」問題だが、実際のNASAでは当時すでに人種分離は撤廃されていたという。ドロシーの昇進も史実ではもっと早い段階で実現している。エンターテインメントとして差別の過酷さを強調するための脚色であり、その演出効果は絶大だが、「実話ベース」として観る際には留意が必要だ。
原題「Hidden Figures」の秀逸さ
原題の「Hidden Figures」には二重の意味がある。「隠された人物たち」と「知られざる数字(計算)」——彼女たちの存在と、彼女たちが導き出した数式の両方を指す見事なタイトルだ。邦題「ドリーム」は悪くないが、この知的な二重構造が失われたのは惜しい。ちなみに当初の邦題は「ドリーム 私たちのアポロ計画」だったが、本作が扱うのはマーキュリー計画であり、批判を受けて変更された経緯がある。
🎭 印象的なシーン
「NASAでは小便の色は同じだ」
ハリソンがハンマーを振り上げ、「有色人種用」のトイレの看板を叩き壊すシーン。制度そのものを物理的に破壊するという象徴的な行為に、劇場では拍手が起きたという。理解を示す「だけ」ではない。行動で示す——それがリーダーだ。
「私を高校に入れてくれたら、あなたは後世に名を残せるわよ」
メアリーが白人男性の判事に訴えるシーン。相手を打ち負かすのではなく、「あなたが歴史を作る側になれる」と持ち上げる。敵を味方に変える、知的でしたたかな交渉術に鳥肌が立つ。
「昼も夜も犬のように働いてるのに!」
キャサリンが上司に向かって感情を爆発させるシーン。雨に濡れながらトイレに走る日々、コーヒーポットすら共有できない屈辱。その蓄積が一気に噴き出す瞬間は、観る者の心も揺さぶる。
💭 視聴後の感情
観終わった後、胸に残るのは単なる感動ではない。「明日、自分の持ち場で、自分の仕事を全うしよう」という静かで力強い決意だ。彼女たちは差別と闘ったが、その武器は抗議活動ではなく「圧倒的な仕事」だった。チョークを握りしめ、誰にも追随できない数式を叩き出した。プログラミング言語を独学で習得し、来るべき未来そのものになった。己の仕事で、現実を変えていく——その姿勢こそが、時代を超えて響くメッセージである。
こんな方には向かないかも…
- 史実に忠実な作品を求める人(脚色が多い)
- 「白人の救世主」的な展開が苦手な人
- 道徳的なメッセージが前面に出る映画が合わない人
サウンドトラック購入先
- Spotify:配信あり
- Apple Music:配信あり
ハンス・ジマー、ファレル・ウィリアムズ、ベンジャミン・ウォルフィッシュによる劇伴は、60年代ソウルの泥臭さとモダンなサウンドが融合した名盤。ファレルの「Runnin'」「Crave」など、映画を観た後も聴きたくなる楽曲が揃う。
🎬 『ドリーム』が好きなら絶対見るべき3選
グリーンブック
1962年、天才黒人ピアニストと粗野なイタリア系用心棒が、差別の色濃い南部をツアーで巡るロードムービー。『ドリーム』と同じ60年代アメリカを舞台に、人種も階級も超える友情を描いたアカデミー賞作品賞受賞作。痛快さと感動のバランスが絶妙で、本作が好きなら必ず響く。
オデッセイ
火星に一人取り残された宇宙飛行士が、科学の力だけで生き延びようとするサバイバル・ドラマ。「科学という合理性が困難を打ち破る」というテーマが『ドリーム』と共通する。絶望的な状況でもユーモアを忘れない主人公の姿勢は、キャサリンたちの前向きさに通じるものがある。
マネーボール
貧乏球団のGMが、データ分析という「非常識」でメジャーリーグの常識を覆した実話。「合理性で偏見を打ち破る」という点で『ドリーム』と最も親和性が高い。「こんなの野球じゃない」と言われながらも結果を出し続けた男の姿は、差別の中で実力を証明した彼女たちと重なる。
📺 『ドリーム』はどこで見れる?配信状況
視聴はこちらから
- Disney+:見放題
- Amazon Prime Video:レンタル
- U-NEXT:配信なし
『ドリーム』は20世紀スタジオ(旧20世紀FOX)作品のため、Disney+での見放題配信が最もお得。Amazon Prime Videoではレンタル視聴が可能。U-NEXTでは残念ながら配信されていない。
📊 配信サービス比較
| サービス | 配信状況 | 月額料金(税込) |
|---|---|---|
| Disney+ | 見放題 | 990円〜 |
| Amazon Prime Video | レンタル | 600円(+レンタル代) |
| U-NEXT | 配信なし | 2,189円 |
👉 各サービスの詳細な違いはVOD比較7社徹底解説を参照。
📝 まとめ
『ドリーム』は、差別という「非効率」を実力で打ち破った女性たちの物語だ。彼女たちの武器は抗議活動ではなく、圧倒的な仕事だった。チョークを握りしめ、黒板に数式を叩き出す。IBMのマニュアルを盗み読みしてプログラミングを習得する。法廷に立ち、知性としたたかさで扉を開く。差別をやめようと説教するのではなく、差別したら損するよと行動で示した——それが本作の痛快さであり、普遍性だ。
原題「Hidden Figures」には「隠された人物」と「知られざる数字」の二重の意味がある。教科書の片隅にも載らなかった英雄たちへ贈る、最高純度の賛歌。観終わった後、あなたもきっとこう思うはずだ——「さあ、明日もがんばろう」と。
⭐ 作品の特徴
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| ストーリー | ★★★★☆ |
| キャスト | ★★★★★ |
| 映像・演出 | ★★★★☆ |
| 音楽 | ★★★★★ |
| メッセージ性 | ★★★★★ |
うさぎ亭的おすすめ度
⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐☆☆
8.0 / 10
差別は「損」だ。——すべての働く人に贈る、最高のエール。