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コーヒー1杯、4分。バスに乗れば1時間。高級車を買うなら59年。この映画の世界では、すべての支払いが「自分の残り寿命」で行われる。2011年公開の『TIME/タイム』は、「時は金なり」という使い古された格言を、文字通りSFの設定として具現化してみせた。監督はアンドリュー・ニコル。『ガタカ』『トゥルーマン・ショー』で世界の「見えない歪み」を暴いてきた男が、今度は時間=通貨=命という三位一体の等式で、資本主義の構造をむき出しにする。
この作品を初めて観たのは、配信で何か軽めのSFを探していたときだった。設定を知った瞬間の「これは面白い」という直感は正しかった。前半は文句なしに引き込まれる。ただ、後半に進むにつれて感じた違和感もまた、正直に書いておきたい。
🎬 予告編
この作品を3行で
- 「時間=お金=命」のSF設定が秀逸
- 格差社会を可視化したディストピア
- 設定は天才、脚本はもう一歩
作品情報
- 作品名:TIME/タイム(原題:In Time)
- 公開年:2011年(日本公開:2012年2月17日)
- 監督・脚本:アンドリュー・ニコル
- 出演:ジャスティン・ティンバーレイク、アマンダ・セイフライド、キリアン・マーフィ、オリヴィア・ワイルド
- 上映時間:109分
- ジャンル:SFアクションサスペンス
📖 「TIME タイム」のネタバレなしあらすじ
科学技術の進歩により、すべての人間の成長が25歳で止まるようになった近未来。人々は見た目こそ若いまま生き続けるが、25歳を過ぎた瞬間から左腕に刻まれた「ボディ・クロック」のカウントダウンが始まる。残り時間がゼロになれば、即座に死ぬ。時間はそのまま通貨となり、働いた対価として「時間」を受け取り、コーヒーを買うにも、バスに乗るにも、「命の残り」を切り売りする世界が構築されていた。
富裕層が数百年分の時間を蓄え、事実上の不老不死を謳歌する一方で、貧困層はその日の寿命を稼ぐために走り回る。スラム街で暮らす青年ウィル(ジャスティン・ティンバーレイク)は、ある日、見知らぬ富豪から100年の時間を譲り受ける。しかしその直後、母を目の前で時間切れで失い、怒りと悲しみを抱えたまま富裕層の居住区に潜入。大富豪の娘シルビア(アマンダ・セイフライド)と出会い、時間監視局員(タイムキーパー)の追跡を受けながら、時間に支配された世界の矛盾に立ち向かっていく。
✨ 「TIME タイム」はなぜ観る価値があるのか
ここがすごい!
- 「時間=通貨=命」——SF史に残る設定の発明
- 格差社会をここまで「見える化」した映画は他にない
- 腕のカウントダウンが生む、理屈抜きの恐怖
「時間=通貨=命」——SF史に残る設定の発明
この映画の最大の功績は、「Time is Money」を文字通り映画にしたことに尽きる。コーヒー1杯が4分。バスに乗るのに1時間。高級レストランのランチが8週間半。高級車を買おうものなら59年。日本円に換算すれば「コーヒー84円、バス1,250円」と現実的な価格帯なのに、それを「自分の残り寿命」で払うとなると、感覚がまるで変わる。コンビニのコーヒーですら、4分の命を差し出しているのだ。
アンドリュー・ニコル監督は『ガタカ』で遺伝子格差を、『トゥルーマン・ショー』で虚構の現実を描いてきた。本作では「お金」という抽象的な概念を「命の時間」に置き換えることで、誰もが当たり前に受け入れている資本主義の構造を、一発で異化してみせた。富裕層の金庫に眠る「100万年」。それは100万年分の命が、誰かの腕から吸い取られた結果だ。この等式に気づいた瞬間、現実の銀行口座の数字も少し違って見えてくる。
マルクスの『資本論』を読んだことがなくても、この映画を109分観れば、搾取の構造は嫌というほど理解できる。それがこの設定の恐ろしさであり、面白さだ。
格差社会の「見える化」としての鋭さ
この映画が巧いのは、貧富の格差を「走るか走らないか」という身体的な差異で表現したことだ。スラム街の住人は常に走っている。1秒でも惜しいから。富裕層は決して走らない。走る必要がないから。主人公ウィルが富裕層の街に足を踏み入れたとき、彼の「走り方」が場違いだと即座にバレる。ただそれだけの描写で、この世界の階層構造がすべて伝わる。
物価と税金の同時引き上げで貧困層の寿命を搾り取る仕組み、「少数が不死でいるためには、多くが死ななければならない」と公然と語る支配層。時間警察(タイムキーパー)すら日給ギリギリで暮らしている皮肉。これらは極端に見えて、現実の「ワーキングプア」や「見えない天井」と地続きだ。フィクションなのに、ノンフィクションのように刺さる。そこがこの映画の怖さでもある。
腕のカウントダウンが生む、理屈抜きの恐怖
設定の面白さを語るのは簡単だが、それを「体感」させる演出がなければ映画にはならない。本作はその点でも成功している。登場人物の左腕に刻まれたネオングリーンの13桁の数字が、リアルタイムで減っていく。10、9、8——残り1桁になったときの恐怖は、理屈ではなく反射的に心拍数を上げる。
特に、母と息子が互いに全力で走り寄るシーンの切迫感は本物だ。カウントダウンの数字と、縮まらない距離。観ている側まで息が上がる。アクション映画の銃撃戦やカーチェイスよりも、腕に刻まれた「残り3秒」のほうがよほどスリリングだった。
🎭 印象的なシーン
「娘なのか、妹なのか、母なのか、それとも妻なのか。この時代は混乱している」
カジノで大富豪フィリップが、自分の家族を紹介しながらつぶやくこのセリフ。全員が25歳の容姿。母と娘と妻が並んでも、外見では区別がつかない。笑いと不気味さが同時に込み上げる、この世界の「歪み」を象徴する瞬間だった。この映画の設定が持つ不条理さを、たった数秒で突きつけてくる。
そしてもうひとつ、忘れられないのは追手から逃れた2人が夜の海に飛び込むシーンだ。命のカウントダウンが刻々と進む中、束の間の解放感。唐突すぎるといえばそうだが、「明日がないかもしれない」世界だからこそ成立する刹那のロマンがある。観終わった後、ふと自分の腕を見下ろしてしまった。もしそこに残り時間が刻まれていたら、今日という一日をどう過ごすだろう、と。
💭 視聴後の感情
正直に書く。前半が終わった時点では「これは傑作になる」と思っていた。設定の導入、世界観の構築、母との別れ——すべてが完璧に近い流れで進んでいた。だが後半に入ると、その期待は少しずつしぼんでいった。詳しくは後述するが、「もう一段階踏み込んでくれれば」という思いが残る作品でもある。
それでも、観終わった後に「自分の時間の使い方」について考えてしまう映画は、そう多くない。仕事に追われる日々の中で、自由な時間を得るために自由な時間を削っている——その矛盾に、本作は嫌というほど気づかせてくる。娯楽として楽しめて、帰り道にふと考え込んでしまう。その二重構造こそが、この映画の最大の価値だと思う。
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こんな方におすすめ!
- 「時間の使い方」に疑問を感じている20〜30代の方——自由な時間を得るために自由な時間を削る矛盾が、この映画には残酷なほど可視化されている
- 格差社会・資本主義の矛盾に関心がある方——マルクスを読まなくても、109分で搾取の構造を体感できる
- 『ガタカ』『トゥルーマン・ショー』が好きなアンドリュー・ニコル監督ファン——「設定一発で世界をひっくり返す」監督の真骨頂がここにある
😅 ここが惜しい…正直に書く
後半の失速——設定の器に、物語が追いつかない
ここが残念…
- 後半は銀行強盗の繰り返しに終始し、社会構造の変革まで踏み込めていない
- 意味深に張られた「父親の伏線」が完全に未回収
- 吹替版はヒロインの演技に難あり(ただし2025年に新録版が制作済み)
ここまで設定を褒めてきたが、一つだけ——いや、一つでは済まない不満がある。
前半で提示される「時間=通貨=命」の世界は、社会構造そのものへの問いかけだった。富裕層が貧困層の命を制度的に吸い上げ、物価と税金で逃げ道を塞ぐ。この設定が描く問題のスケールは巨大だ。にもかかわらず、後半でウィルとシルビアがやることは「銀行を襲って時間を配る」の繰り返し。設定が突きつける問題の大きさに対して、解決手段があまりにも小さい。たった2人で次々と銀行強盗を成功させる展開は、前半のリアリティとは明らかに温度が違う。「ボニー&クライド」として楽しめるといえばそうだが、この設定ならもう一段深い場所に踏み込めたはずだ。
もうひとつ、個人的に引っかかったのが父親の伏線が完全に放置されていることだ。タイムキーパーのレオン(キリアン・マーフィ)が意味深に語る父の過去、金庫のパスワードがダーウィン=リンカーンの誕生日であること——すべてが「何かある」と匂わせておいて、何もない。レオン自身も、スラム出身の職務に忠実な男として魅力的に描かれていたのに、最期が「タイムキーパーなのに時間切れ」という皮肉にしては呆気なさすぎる。もっとウィルとの内面的な対峙が見たかった。
なお、吹替版について一言触れておくと、ヒロイン・シルビア役の演技が作品の緊張感を大きく損なうことで有名だ。字幕版での鑑賞を強く推奨する。ただし朗報として、2025年にスターチャンネルで新録吹替版が制作されており、今後はそちらで改善された吹替を楽しめる。浪川大輔氏は続投、シルビア役は折井あゆみ氏に交代している。
こんな方には向かないかも…
- 設定だけでなく、脚本の緻密さや伏線回収にこだわる方——後半の展開は率直に粗い
- 社会派SFとして深い考察を求める方——問題提起の鋭さに対して、結末が浅い
サウンドトラック購入先
- Spotify:配信あり(Craig Armstrong作曲)
- Apple Music:配信あり
🎬 「TIME/タイム」が好きなら絶対見るべき3選
ガタカ(1997)
同じアンドリュー・ニコル監督のデビュー作にして、SF映画の金字塔。遺伝子操作で「適正者」と「不適正者」が分けられる近未来を舞台に、DNAによる差別に抗う男の物語を描く。『TIME/タイム』の「時間格差」が刺さった人なら、こちらの「遺伝子格差」にも間違いなく引き込まれるはずだ。ニコル監督の設定力が最も美しく結実した作品。
トゥルーマン・ショー(1998)
アンドリュー・ニコルが脚本を手がけた、もうひとつの名作。自分の人生がすべてテレビ番組だった——そんな「世界のルールが嘘だった」という衝撃を、ジム・キャリーの名演で描き出す。『TIME/タイム』が「社会のルール」を疑う映画なら、こちらは「現実そのもの」を疑う映画だ。ニコルの世界観を堪能するなら、この2本は外せない。
ファイト・クラブ(1999)
資本主義への怒りを拳で叩きつける、デヴィッド・フィンチャーの問題作。『TIME/タイム』が「搾取される側」の物語なら、『ファイト・クラブ』は「消費に飼い慣らされた側」が覚醒する物語だ。システムに対する怒りの温度感は共通している。ただし、こちらのほうが後半の畳み方は数段上だったと言わざるを得ない。
📺 「TIME タイム」はどこで見れる?配信状況
視聴はこちらから
- U-NEXT (31日間無料体験):見放題
- Hulu:見放題
- Disney+:見放題
- Amazon Prime Video (30日間無料体験):レンタル
📊 配信サービス比較
| 配信サービス | 配信状況 | 無料体験 |
|---|---|---|
| U-NEXT | 見放題 | 31日間無料 |
| Hulu | 見放題 | — |
| Disney+ | 見放題 | — |
| Amazon Prime Video | レンタル | 30日間無料 |
👉 各サービスの詳細な違いはVOD比較7社徹底解説を参照。
📝 まとめ
『TIME/タイム』は、設定だけなら間違いなく傑作だった。「時間=通貨=命」という等式は、SF映画の設定として発明に近い。誰もが「時間がない」「お金がない」とこぼす現代社会で、その2つが本当に同じものだったら?という問いかけは、2011年の公開から10年以上経った今もまったく色褪せていない。むしろ、格差が広がり続ける現実社会の中で、年々切実さを増している。
ただ、映画としての完成度は設定の可能性に届かなかった。後半の銀行強盗の繰り返し、未回収の伏線、駆け足の展開——「もう一捻りあれば」という悔しさが残る。それでも、と書いておきたい。この映画を観た後、自分の「時間」の使い方をふと考えてしまう。仕事に追われる帰り道、ビールを飲みながらぼんやり過ごす夜。その1時間に、もし値段がついていたら——そんなことが頭をよぎる映画は、やはり観る価値がある。設定は天才、脚本はもう一歩。だが、その「天才的な設定」だけで109分を楽しめるのだから、時間の無駄にはならない。この言い方が、この映画にとって最大の褒め言葉かもしれない。
⭐ 作品の特徴
| 評価項目 | コメント |
|---|---|
| 設定・世界観 | SF史に残るレベルの発明。「時間=通貨=命」の三位一体は圧倒的 |
| 脚本・ストーリー | 前半は秀逸、後半は銀行強盗の繰り返しに矮小化。伏線の未回収も目立つ |
| キャスト | ティンバーレイクの哀愁、アマンダの華、キリアンの冷徹さ。全員25歳の設定がキャスティングを活かしている |
| 映像・演出 | レトロフューチャーな車、ネオングリーンのカウントダウン。低予算ながら世界観の構築は巧み |
| 社会風刺 | 格差社会の可視化としてはトップクラス。マルクスを映画で体験できる |
| テンポ | 109分で観やすいが、後半のアクション偏重が前半のリアリティを損なう |
うさぎ亭的おすすめ度
⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐☆☆☆
6.5 / 10
設定は天才、脚本はもう一歩。それでも「時間の価値」を考えさせてくれる、愛すべき惜作。