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役者は一流。脚本も悪くない。だが、観終わったあとに残ったのは「惜しい」という感覚だった。
三谷幸喜が自ら書き下ろした小説を映画化した『清須会議』。本能寺の変の直後、織田信長の後継者を巡って繰り広げられた「評定という名の戦」を、大泉洋、役所広司ら豪華キャストで描いた群像劇だ。合戦シーンがゼロという異色の時代劇であり、刀ではなく言葉と策略で天下が動く。その着眼点は見事。だが正直に言えば、観たあとにどっと疲れが押し寄せたのも事実だった。名優たちの演技合戦と、三谷幸喜の軽快な脚本が織りなす魅力、そしてどうにも拭えなかった不満点を、率直に書いていく。
🎬 予告編
この作品を3行で
- 合戦ゼロ、言葉と策略で天下が動く異色の時代劇
- 大泉洋×役所広司の演技合戦が最大の見どころ
- 138分の長尺がじわじわ体力を奪う
作品情報
- 作品名:清須会議
- 公開年:2013年
- 監督・脚本:三谷幸喜
- 出演:役所広司、大泉洋、小日向文世、佐藤浩市、鈴木京香、妻夫木聡 ほか
- 上映時間:138分
- 原作:三谷幸喜『清須会議』(小説)
📖 映画「清須会議」のあらすじ
天正10年(1582年)、本能寺の変で織田信長が命を落とす。跡継ぎ問題が勃発し、筆頭家老の柴田勝家(役所広司)は三男・信孝を、羽柴秀吉(大泉洋)は次男・信雄を後継者に推す。両者はそれぞれ味方を増やすべく根回しに奔走し、やがて清須城で運命の評定が始まる。
出席するのは勝家と秀吉に加え、勝家の盟友・丹羽長秀(小日向文世)と、どちらにも付かない日和見男・池田恒興(佐藤浩市)。さらに信長の妹・お市(鈴木京香)の思惑も絡み合い、評定は予想外の方向へと転がっていく。
✨ 映画「清須会議」の魅力
ここがすごい!
- 大泉洋×役所広司の「策士vs武人」対決が白熱
- 合戦ゼロで歴史が動く、会議室が戦場の異色時代劇
- 戦国の根回し術が、現代の組織政治に重なる普遍性
大泉洋×役所広司——「策士」と「武人」の化学反応
この映画の最大の見どころは、間違いなく大泉洋と役所広司の演技合戦だ。
大泉洋が演じる秀吉は、お調子者の仮面をかぶった策士。人懐っこい笑顔の裏に、状況を完璧に把握し、先の先まで読んでいる冷徹な知性が透ける。表向きはへらへらしているのに、一瞬だけ見せる目の奥の暗さが不気味で、これまでの「陽気な秀吉像」とは一線を画している。対する役所広司の勝家は、武骨で不器用で真っ直ぐ。女性の前では挙動不審になり、策略には丸腰で立ち向かう。その愚直さは滑稽でもあるが、同時にどこか愛おしい。
ここまで褒めてきたが、一つだけ引っかかった点がある。この二人の「実力差」が序盤からあまりに明白なのだ。秀吉が何手も先を読んでいるのに対して、勝家は終始後手に回る。失敗するべくして失敗している感覚が最初から漂っていて、駆け引きとしてのスリルが削がれている。もう少し拮抗した頭脳戦であれば、最後の逆転がより痛烈に響いたはずだ。それでも、二人の演技そのものは文句なしに見応えがある。役者の力量で成立している映画と言い切っても、言い過ぎではないだろう。
合戦ゼロで歴史が動く——「評定という名の戦」
戦国時代を描いて合戦シーンが一切ない。この時点で、三谷幸喜の着眼点のユニークさは認めざるを得ない。
刀を抜かず、言葉と根回しだけで天下の行方が決まる。清須城の中をそれぞれが動き回り、味方を集め、恩を売り、情報を操る。「会議も戦場」という構図は、三谷幸喜の得意とする密室劇の延長線上にありながら、時代劇というフォーマットと組み合わさることで独特の緊張感を生んでいる。
戦国の根回し——現代の会議室にも通じる普遍性
「誰を味方につけるか」「どう恩を売るか」「情報をどう操作するか」。劇中で描かれる根回しの数々は、戦国時代のものでありながら、現代のオフィスで繰り広げられる政治力学そのものだ。
どっちの派閥につくか、誰がイニシアチブを握るか。そういう生々しいやり取りに心当たりがある人は少なくないだろう。勝家の「正論は通る」という信念と、秀吉の「人の懐に入れば勝てる」という処世術。どちらが正しいかではなく、どちらが勝つか。その答えは、400年後の今も変わっていない気がする。
🎭 印象的なシーン
終盤、丹羽長秀(小日向文世)の葛藤が胸に刺さった。勝家の盟友でありながら、時代の流れに逆らえない長秀の表情に、友情と信念のあいだで引き裂かれる人間の弱さが滲んでいる。小日向文世の「小型犬のようなウルウルした目」が、コメディの空気を一瞬で塗り替えた。
そしてラスト、秀吉が見送りの場で勝家に笑顔を向けるシーン。したたかに腹を割ったフリを続ける秀吉と、すべてを悟った上で静かに威厳を見せる勝家。二人の「その後」を知っていると、このやり取りの裏に流れる哀しみが一層重い。エンドロールで賤ヶ岳の戦いの音声が流れる演出も粋だ。コメディの空気を最後の最後でひっくり返す、三谷幸喜らしい仕掛けだった。
💭 視聴後の感情
正直に言えば、観終わったあとに「面白かった」よりも「疲れた」が先に来た。138分という上映時間の重さが、会話劇中心の構成と相まって、後半にじわじわ効いてくる。ただ、数日経ってから不思議と思い出すのは、勝家の不器用な優しさや、秀吉の笑顔の裏にあった冷たさだったりする。嫌いにはなれない。でも手放しでは褒められない。そういう、微妙な温度感の映画だ。
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こんな方におすすめ!
- 戦国時代の「裏の戦い」——知略と根回しのドラマに興味がある方
- 大泉洋・役所広司など名優の演技バトルを堪能したい方
- 職場の人間関係や組織の政治力学に思うところがある方
😅 ここが惜しい…映画「清須会議」の不満点
138分は会話劇としては長すぎる
合戦シーンがない映画で2時間18分は正直きつい。会話と根回しだけで物語が進む構成上、中盤にどうしてもダレる時間帯が生まれる。旗取り合戦のようなコミカルなシーンが挟まれるものの、本筋からズレている印象が拭えず、テンポの緩急というよりも冗長に感じた。90分から100分に収めていれば、もっとキレのある作品になっていたのではないか。
歴史知識がないと置いていかれる
登場人物の相関関係や歴史的背景の説明が薄い。戦国時代にある程度詳しい人にはサクサク楽しめるが、「柴田勝家って誰?」という層にとってはハードルが高い。三谷幸喜作品は本来「誰でも楽しめる」ことが持ち味のはずだが、本作に関しては歴史好きに向けた内輪のサービスが前に出すぎている。
柴田勝家が「無策すぎる」——実力差で緊張感が薄い
これが個人的に最も気になった点だ。秀吉が何手も先を読み、周到に根回しを進めるのに対して、勝家はコメディリリーフに寄りすぎている。不器用で真っ直ぐなキャラクターは愛おしいが、あまりに無策で「失敗するべくして失敗している」感覚が序盤から漂う。会話劇の面白さは拮抗した力関係から生まれるもの。その前提が崩れているため、展開の意外性や逆転のカタルシスが弱い。もう少し勝家にも知略を持たせるか、あるいは秀吉の策が一度は破綻するような展開があれば、終盤の切なさがより際立ったはずだ。
ここが残念…
- 138分の長尺が会話劇のテンポを殺している
- 歴史知識がないと登場人物の把握が困難
- 勝家が無策すぎて駆け引きの緊張感が薄い
こんな方には向かないかも…
- 戦国時代の知識がほとんどない方(登場人物の把握が難しい)
- 三谷幸喜に「マジックアワー」級の爆笑を期待している方
- 2時間超の会話劇に体力的な不安がある方
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🎬 「清須会議」が好きなら観るべき3選
首(2023年)
北野武が描く本能寺の変。三谷版の「清須会議」がコメディで戦国を切り取ったのに対し、北野版はバイオレンスと狂気で戦国を解体する。同じ秀吉でも大泉洋とビートたけしではまるで別人。二作を続けて観ると、「秀吉という人間」の多面性が浮かび上がって面白い。
12人の優しい日本人(1991年)
三谷幸喜の会話劇の原点にして最高傑作と呼ぶ人も多い一作。「もし日本に陪審員制度があったら」という仮定のもと、12人の陪審員がひとつの評決を巡って議論する密室劇だ。「清須会議」で物足りなかった二転三転の駆け引きが、こちらでは存分に味わえる。
ステキな金縛り(2011年)
「清須会議」に登場する更科六兵衛の出典元がこの映画だ。落ち武者の幽霊を証人として法廷に立たせるという荒唐無稽な設定を、深津絵里と西田敏行のコンビが見事に成立させている。三谷幸喜のコメディとしての切れ味は「清須会議」より上。三谷作品の入門にも最適な一本だ。
📺 「清須会議」はどこで見れる?配信状況
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📊 配信サービス比較
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📚 原作情報
原作は三谷幸喜が17年ぶりに書き下ろした同名小説。映画とは大きくアプローチが異なり、各登場人物の独白形式(現代口語体)で進行する。勝家の不器用さ、秀吉の腹黒さが一人称で語られるため、映画では見えなかった「内面」が読める。三谷幸喜自身が「小説とは全く異なる映画にした」と公言しており、両方体験して初めて『清須会議』の全貌が見える構成になっている。
📝 まとめ
『清須会議』は、三谷幸喜の着眼点の面白さと名優たちの演技力に支えられた映画だ。「評定という名の戦」で歴史が動く瞬間を描く発想は見事だし、大泉洋と役所広司の対比は確かに見応えがある。清須会議という題材自体が持つ「その後の悲劇」——勝家と秀吉が賤ヶ岳で激突する未来——を知っていると、コメディの裏に流れる哀しみも感じ取れる。
ただ、この映画を観たあとに残ったのは、達成感よりも疲労感だった。138分の長尺、コメディに寄りすぎて削がれた緊張感、勝家の無策ぶりがもたらす展開の予定調和。「役者は100点、作品としては及第点」というのが正直なところだ。それでも、観終わってから何日か経つと、不思議と勝家の不器用な笑顔や、秀吉のラストカットの冷たい目が頭をよぎる。嫌いにはなれない映画。ただ、もう一度観るかと言われると、正直迷う。
⭐ 作品の特徴
| 評価項目 | コメント |
|---|---|
| ストーリー | 着眼点は秀逸だが展開に意外性が乏しい |
| 演技 | 大泉洋×役所広司の対決は必見 |
| 脚本 | 三谷幸喜らしい軽妙さはあるがキレ不足 |
| テンポ | 138分は長い。中盤にダレあり |
| 映像・美術 | 清須城のセットは見事 |
| 音楽 | 荻野清子のスコアが作品を支える |
うさぎ亭的おすすめ度
⭐⭐⭐⭐⭐☆☆☆☆☆
5.2 / 10
役者は一流、作品は及第点。惜しい、が正直な感想。