『クリード 炎の宿敵』感想|敗者の30年に泣く傑作続編

※本ページはプロモーションが含まれています

個人的には、前作『チャンプを継ぐ男』よりもこちらが好きだ。こう言うと驚かれるかもしれないが、理由は単純で、この映画の主役は「勝者」ではなく「敗者」だから。ロッキーに負けてすべてを失った男が、30年の歳月を経て再びスクリーンに現れる。その老いた背中を見た瞬間、この続編が「ただの続編」では終わらないと確信した。

『クリード 炎の宿敵』は、アポロ・クリードの息子アドニスと、イワン・ドラゴの息子ヴィクターの因縁対決を軸にした物語だ。だがこの映画が本当に描いているのは、リングの上ではなく、リングの外で戦い続けてきた父親たちの人生そのものである。1985年の『ロッキー4/炎の友情』から33年。フィクションと現実の歳月が溶け合うこの作品に、筆者は完全にやられた。

🎬 予告編

この作品を3行で

  • ロッキー4から33年越しの因縁決着
  • 敵側ドラゴ親子のドラマに涙必至
  • 3組の「父と子」が交錯する人間讃歌

作品情報

  • 作品名:クリード 炎の宿敵(原題:Creed II)
  • 公開年:2018年(日本公開:2019年1月11日)
  • 監督:スティーヴン・ケープル・Jr.
  • 脚本:シルヴェスター・スタローン、ジュエル・テイラー
  • 出演:マイケル・B・ジョーダン、シルヴェスター・スタローン、テッサ・トンプソン、ドルフ・ラングレン、フローリアン・ムンテアヌ
  • 上映時間:130分
  • ジャンル:スポーツ / ヒューマンドラマ

📖 敗者の30年が交差するあらすじ

ロッキーの指導のもと、ついに世界ヘビー級チャンピオンの座を手にしたアドニス・クリード。恋人ビアンカとの結婚、そして子供の誕生と、人生は順風満帆に見えた。だがそこに現れたのが、かつて父アポロをリング上で死に追いやったイワン・ドラゴと、その息子ヴィクターだった。

ロッキーに敗れて以来、国からも妻からも見捨てられ、30年間を不遇のまま過ごしてきたドラゴ。彼は息子を最強のボクサーに育て上げ、復讐の機会を虎視眈々と狙っていた。ロッキーの反対を押し切り、アドニスはヴィクターとの対決に挑むが、その先に待っていたのは拳だけでは解決できない、父と子の物語だった。

✨ 33年越しの因縁が生んだこの作品の魅力

ここがすごい!

  • ドラゴ親子の描写——敵にこそ泣かされる脚本の凄み
  • 3組の「父と子」が重なる重層的ドラマ
  • タオルを投げるシーン——33年越しの伏線回収

ドラゴ親子の描写——敵にこそ泣かされる

この映画で最も胸に刺さったのは、主人公アドニスのドラマではない。敵であるドラゴ親子の30年間だ。

1985年、モスクワでロッキーに敗北したイワン・ドラゴ。あの試合の後、彼の人生がどうなったか。『ロッキー4』を観た人は多くても、「その後のドラゴ」を想像した人は少なかったのではないか。国の英雄から一転、「ソ連の面汚し」として蔑まれ、妻にも去られ、ウクライナの片隅で息子と二人、復讐だけを糧に生きてきた。冒頭数分で描かれるその30年間の重みが、映画全体の温度を決定づけている。

ここで正直に言うと、筆者は前作の時点ではドラゴというキャラクターに特別な思い入れはなかった。『ロッキー4』の「冷酷な戦闘マシーン」という印象が強く、そこに人間的な奥行きは感じていなかったのだ。だからこそ、本作で老いたドルフ・ラングレンが画面に映った瞬間の衝撃は大きかった。しわだらけの顔に刻まれた30年分の屈辱と怒り。あの目だけで、彼がどんな人生を歩んできたかがわかる。

息子ヴィクターもまた、父親の復讐のために「殺人マシーン」として育てられた青年だ。母親には捨てられ、父親からは復讐の道具として扱われる。彼が試合で見せる獰猛さの裏にある飢えと悲しみを想像すると、どちらを応援していいのかわからなくなる。この「敵にも感情移入してしまう構造」こそ、本作が前作を超えた最大の理由だと筆者は考えている。

勧善懲悪で終わらせない。敗者にも物語がある。そのことをここまで丁寧に描いたボクシング映画が、他にあっただろうか。

3組の「父と子」が重なる重層構造

本作のテーマを一言で言えば「父になること」だ。アドニスとアポロ(不在の父)、ロッキーと実の息子(疎遠になった父)、ドラゴとヴィクター(復讐に縛られた父)。この三者三様の父子関係が、一本の映画の中で絡み合い、共鳴し合う構成は見事としか言いようがない。

アドニスは本作で結婚し、娘が生まれ、初めて「父親」という立場に立つ。会ったことのない父アポロの影を追い続けた男が、自分自身が父になることで新しい戦う理由を見つけていく過程には、ボクシング映画の枠を超えた普遍的な成長ドラマがある。

一方で、ロッキーも実の息子と疎遠になっている事実が本作では描かれる。妻エイドリアンを亡くし、親友アポロも失い、気づけば独りになっていた男。弟子のアドニスには「今日は人生最高の日だ」と子供の誕生を祝う言葉をかけながら、自分の孫の顔はまだ見ていない。この矛盾が、ロッキーという人間のリアルな不完全さを際立たせていた

タオルを投げるシーン——33年越しの伏線回収

ネタバレは避けるが、この一点だけは書かせてほしい。クライマックスの試合で、ある人物がリングにタオルを投げ入れる

『ロッキー4』を観た人なら、この行為の意味がわかるはずだ。あの時、ロッキーはセコンドとしてアポロの試合にいながら、タオルを投げることができなかった。その結果、アポロはリング上で命を落とした。ロッキーが30年間背負い続けた後悔。それと全く同じ状況で、別の人物が別の選択をする。

復讐よりも、名誉よりも、息子の命を選ぶ。たったそれだけのことが、なぜこんなにも胸を打つのか。この一場面のために33年かかったのだと思うと、映画というものの途方もない時間の力を感じずにはいられない。

🎭 印象的なシーン

タオルのシーン以外にも、忘れられない場面がある。

試合後、ドラゴ親子が二人で黙々とランニングをするラストシーン。セリフはない。ただ走っている。それだけなのに、二人の関係が「トレーナーと選手」から「父と息子」に変わったことが画面から伝わってくる。筆者がこの映画を観終わった後、最初に思い出したのはこのシーンだった。派手なファイトシーンではなく、静かに走る二人の後ろ姿。それがこの映画の本質を物語っている。

もう一つは、クライマックス後のロッキーの背中。「お前の時代だ」——アドニスにそう告げた後、一人佇むスタローンの後ろ姿に、ロッキーシリーズの40年が凝縮されていた。世代交代というものの、美しさと寂しさ。

💭 視聴後の感情

観終わった後、しばらく動けなかった。胸の中にあったのは「爽快感」ではなく、もっとじんわりとした温かさに近い感情だった。勝者のガッツポーズよりも、敗者が息子の肩に手を置く瞬間のほうが、この映画ではずっと雄弁だ。

ドラゴが歩んだ30年間の不遇。その長さを想像した時、フィクションなのに妙にリアルな重さを感じた。演じるドルフ・ラングレン自身も、ロッキー4の後に人気が低迷し、私生活も荒れた時期があったという。そんな現実の歳月と映画の物語が重なる瞬間、これはもう「演技」ではない何かになっている。

今すぐ見たい方はU-NEXTで視聴可能(31日間無料

こんな方におすすめ!

  • ロッキーシリーズ(特に4)をリアルタイムで観た世代——33年分の歳月がそのまま物語の重みになる。ドラゴの再登場だけで込み上げるものがあるはず
  • 父親として子育て中の男性——3組の父子ドラマは「父になること」のリアルそのもの。子供を持つ人ほど刺さる映画だ
  • ボクシング映画に興味はあるが、ロッキーシリーズは未見の人——「敵にも感情移入してしまう」構造は、シリーズの文脈を知らなくても十分に響く普遍的なドラマ

😅 ここが惜しい…

気になった点

ここが残念…

  • ヴィクターの存在感がもう少し欲しかった
  • 前作で描かれたロッキーの癌設定が放置気味

ヴィクター役のフローリアン・ムンテアヌは、本物のボクサーだけあって肉体の説得力は抜群だ。ただ、スタローンとラングレンという40年のキャリアを背負った二人の前では、どうしてもオーラの面で見劣りしてしまう。ヴィクター単独のドラマシーンがもう少し用意されていれば、最終決戦の重みがさらに増したのではないか。

もう一点、前作で大きく扱われたロッキーの癌設定が、本作ではほぼ触れられない。物語の焦点が父子ドラマに移ったことは理解できるが、前作からの一貫性という意味では少し引っかかった。とはいえ、これらは映画の本筋を損なうほどの問題ではない。ドラゴ親子のドラマがあまりにも強烈なので、観終わった後に思い返して「そういえば」と気づく程度の話だ。

こんな方には向かないかも…

  • ボクシングの試合にリアリティを求める方(大味な打ち合いが多い)
  • ヒューマンドラマよりも試合の駆け引きを重視する方

🎬 『クリード 炎の宿敵』が好きなら絶対見るべき3選

ロッキー4/炎の友情(1985年)

『クリード 炎の宿敵』の「前日譚」にして原点。アポロとドラゴの悲劇的な試合、ロッキーとドラゴのモスクワ決戦。本作を観た後に改めて観ると、ドラゴの「その後」が見えてしまい、印象が一変するはずだ。33年越しの伏線回収の衝撃を最大限に味わうために、未見の方はぜひ。

クリード チャンプを継ぐ男(2015年)

ロッキーからアドニスへの「魂の継承」を描いた前作。ライアン・クーグラー監督の長回しカメラワークによる没入感は、本作とは別ベクトルの凄みがある。アドニスが「クリード」の名を受け入れるまでの葛藤と、老いたロッキーの人間味溢れる姿に泣かされる。本作の感動を100%味わうための必須前提作品だ。

『クリード チャンプを継ぐ男』のレビュー記事を読む

ブラックパンサー(2018年)

マイケル・B・ジョーダンが「敵役」として出演したマーベル作品。前作『クリード』のライアン・クーグラー監督とのコンビで、「祖国に見捨てられた男の復讐」というドラゴと重なるテーマを描いている。キルモンガーというヴィランの悲しみは、ヴィクターのそれと共鳴する部分がある。

『ブラックパンサー』のレビュー記事を読む

📺 『クリード 炎の宿敵』はどこで見れる?配信状況

📊 配信サービス比較

配信サービス配信状況無料体験
U-NEXT見放題31日間無料
Hulu見放題なし
Amazon Prime Videoレンタル30日間無料

👉 各サービスの詳細な違いはVOD比較7社徹底解説を参照。

📝 まとめ

『クリード 炎の宿敵』は、前作の「継承」というテーマをさらに深化させ、勝者だけでなく敗者の人生にも光を当てた稀有な続編だ。ロッキーシリーズを40年以上追いかけてきたファンにとっても、本作から初めて触れる人にとっても、「父と子」という普遍的なテーマは等しく胸に迫る。

観終わった翌日、ふとドラゴ親子のランニングシーンが頭をよぎった。あの静かな後ろ姿が、この映画で最も雄弁な場面だったと今でも思う。派手なKOよりも、タオルを投げる一瞬よりも、ただ二人で走っているだけの画が忘れられない。きっとそれは、「一緒に走る」ということが、この映画における最も美しい「和解」の形だからだろう。ロッキーシリーズは「立ち上がること」を描いてきた。本作はその先にある「誰かと一緒に歩くこと」を描いている。

⭐ 作品の特徴

項目評価
ストーリー★★★★★(3組の父子ドラマが見事に交錯)
映像・演出★★★★☆(堅実だが前作ほどのエッジはない)
音楽★★★★★(ロッキーのテーマの使い方が絶妙)
キャスト★★★★★(ラングレンの哀愁が白眉)
感動度★★★★★(ドラゴ親子で涙腺崩壊)
リプレイ性★★★★☆(ロッキー4を観てから再見すると化ける)

うさぎ亭的おすすめ度

⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐☆

8.5 / 10

敗者の背中に、最も深い物語が宿る。