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102分で描ききる「完璧な脚本」──『インファナル・アフェア』が傑作である理由

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「八大地獄の最たるを《無間地獄》という」──冒頭で告げられるこの一節が、102分後、残酷なまでに回収される。警察に潜入するマフィア、マフィアに潜入する警察官。鏡のように対称的な二人の男が、互いの正体を知らぬまま「裏切り者探し」を命じられる。この設定だけで、もう面白くないわけがない。

2002年、香港映画賞を総なめにし、ハリウッド史上最高額でリメイク権が落札された本作。マーティン・スコセッシ監督による『ディパーテッド』、日本版『ダブルフェイス』の原点にして、いまだ超えられていないオリジナル。脚本の完成度、二人の主演俳優の魅力、そして102分という無駄のない構成。「潜入捜査もの」の教科書として、今こそ観るべき一本だ。

🎬 予告編

📌 この作品を3行で

この作品を3行で

  • 警察とマフィア、互いに潜入した二人の男の宿命
  • 102分に凝縮された、息もつかせぬ心理戦
  • 「無間地獄」──抜け出せない苦しみの物語

作品情報

  • 作品名:インファナル・アフェア(原題:無間道)
  • 公開年:2002年(日本公開:2003年)
  • 監督:アンドリュー・ラウ、アラン・マック
  • 出演:トニー・レオン、アンディ・ラウ、アンソニー・ウォン、エリック・ツァン
  • 上映時間:102分
  • 製作国:香港

📖 『インファナル・アフェア』のあらすじ

1991年、香港。ストリート育ちの青年ラウ(アンディ・ラウ)は、マフィアのボス・サムに見込まれ、警察学校へスパイとして送り込まれる。一方、警察学校で優秀な成績を収めていた青年ヤン(トニー・レオン)は、ウォン警視からマフィアへの潜入捜査を命じられる。

10年後。ラウは警察内で着実に出世し、ヤンはマフィアの幹部として信頼を得ていた。ある麻薬取引の日、ヤンは取引情報を警察に流し、ラウはその情報をマフィアに漏らす。互いの組織に「裏切り者」がいることに気づいた警察とマフィア。二人はそれぞれ、相手側のスパイを探し出すよう命じられる──。

✨ 『インファナル・アフェア』の魅力

ここがすごい!

  • 「鏡像構造」の脚本設計──単なるサスペンスを超えたアイデンティティの物語
  • 102分に凝縮された緊張感──無駄を削ぎ落とした「脚本の教科書」
  • 「無間地獄」という仏教的テーマ──終わりなき苦痛の哲学的深み

「鏡像構造」の脚本設計

警察に潜入するマフィア、マフィアに潜入する警察官。この完璧な対称構造こそが、本作を単なる犯罪映画から「アイデンティティの物語」へと昇華させている。

ラウもヤンも、「本当の自分」と「演じている自分」の間で引き裂かれている。ラウは善人として生きたいと願いながらマフィアの手先であり続け、ヤンは警察官でありながら犯罪者として10年を過ごす。どちらも「自分が何者なのか」を見失いかけている。その苦悩が、トニー・レオンとアンディ・ラウという二大スターの演技によって、痛いほど伝わってくる。

102分に凝縮された緊張感

ハリウッドリメイク版『ディパーテッド』が151分なのに対し、本作はわずか102分。この「削ぎ落としの美学」が、息もつかせぬ緊張感を生んでいる。

余計なサブプロットは排し、二人の男の対峙に集中した構成。派手な銃撃戦や爆発に頼ることなく、脚本と演技だけで観客を画面に釘付けにする。これこそが「脚本の教科書」と称される所以だ。冒頭の麻薬取引シーンから、情報戦が展開される中盤、そして衝撃のクライマックスまで、一切の弛緩がない。

「無間地獄」という仏教的テーマ

原題「無間道」は、仏教における最も苛烈な地獄──「一度入ると抜け出せない、絶え間なく続く苦しみ」を意味する。

ラウは善人になろうとしても許されず、ヤンは警察官としての自分を証明できない。どちらも「終わりなき苦痛」の中にいる。この哲学的深みが、単なるジャンル映画を超えた普遍性を本作に与えている。冒頭で語られる涅槃経の一節が、ラストで残酷なまでに回収される構成の見事さよ。

トニー・レオンとアンディ・ラウ──二大スターの競演

本作の魅力を語る上で、二人の主演俳優に触れないわけにはいかない。

トニー・レオン演じるヤンは、10年間マフィアに潜入し、精神を擦り減らしていく男。その疲弊と孤独を、台詞ではなく「表情」と「佇まい」だけで表現する演技は圧巻。哀愁漂う眼差しに、観る者は完全にやられてしまう。

一方、アンディ・ラウ演じるラウは、エリート警官として出世しながら、心の奥底では「善人」として生き直したいと願う男。その葛藤を抑制の効いた演技で見せる。二人の対照的なカッコよさが、物語に深みを与えている。

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※配信状況は変更される場合があります。最新情報は各サービスでご確認ください。

こんな方におすすめ!

  • 『ディパーテッド』『ダブルフェイス』を観て「オリジナルも観たい」と思っている方
  • 「脚本の巧みさ」で映画を評価する方
  • 100分前後でサクッと観られる濃密なサスペンスを探している方

📺 『インファナル・アフェア』はどこで見れる?配信状況

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📊 配信サービス比較

サービス配信状況無料体験月額料金(税込)
U-NEXT⭕ 見放題31日間2,189円
Amazon Prime Video⭕ 見放題30日間600円
Netflix⭕ 見放題なし790円〜
Hulu⭕ 見放題なし1,026円

😅 ここが惜しい…

傑作であることは間違いないが、いくつか気になる点もある。

冒頭の人物関係が掴みにくい

若い頃と現在で俳優が異なるため、最初の10分で「誰が誰か」を把握するのに少し苦労する。特に香港映画に慣れていない人にとっては、顔の区別がつきにくいかもしれない。ただし、一度関係性を把握すれば、あとは怒涛の展開に引き込まれるので心配は無用だ。

女性キャラクターの描き込みの薄さ

ケリー・チャン演じる心療内科医リーは美しく、ヤンが人間らしさを取り戻せる唯一の存在として描かれている。しかし、物語における役割は限定的。これは「男たちの物語」に徹した結果とも言えるが、もう少し深掘りがあれば、さらに厚みのある作品になったかもしれない。

ここが残念…

  • 冒頭の人物関係がやや掴みにくい(ただし10分で慣れる)
  • 女性キャラクターの描き込みがやや薄い

🎭 印象的なシーン

本作には、映画史に残る名シーンがいくつもある。

「俺は警察だ」「俺もだ」

青く突き抜ける空、香港の高層ビル群を背景に、ついに向き合う二人の男。「インファナル・アフェアといえば屋上」と言われるほど象徴的なこのシーン。10年間の潜入生活の重みが、この瞬間に一気に押し寄せる。

そして、ヤンの唯一の味方が消える瞬間。その絶望感は、観る者の心にも深く突き刺さる。「味方は……いない」。孤独の深さに、言葉を失う。

冒頭で語られた涅槃経の一節──「八大地獄の最たるを《無間地獄》という」。この言葉が、ラストで残酷なまでに回収される構成の見事さ。観終わった後、しばらく余韻が消えない。

💭 視聴後の感情

観終わった後に残るのは、単なるサスペンスのカタルシスではない。「自分は何者なのか」という問いが、静かに胸に響く。

ラウもヤンも、どちらも「善人」として生きたかった。しかし、一度踏み入れた道は、もう戻れない。その切なさと、それでも生き抜こうとする姿に、胸が締め付けられる。これは犯罪映画であると同時に、アイデンティティについての深い問いを投げかける作品だ。

こんな方には向かないかも…

  • 派手なアクションや銃撃戦を期待している方
  • ハッピーエンドを求める方
  • 香港映画の雰囲気に慣れていない方(ただし、これを機に入門するのもアリ)

サウンドトラック情報

🎬 『インファナル・アフェア』が好きなら絶対観るべき3選

ソナチネ(1993年・日本)

北野武監督の傑作ノワール。沖縄の抗争に送り込まれたヤクザが、死を予感しながらも穏やかな日々を過ごす。暴力と静寂、哀愁漂う男たちの姿は、『インファナル・アフェア』のトニー・レオンに通じるものがある。久石譲の音楽も素晴らしい。

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新しき世界(2013年・韓国)

『インファナル・アフェア』の精神的後継作と言える韓国ノワールの傑作。8年間犯罪組織に潜入した警察官の苦悩を描く。イ・ジョンジェ、チェ・ミンシク、ファン・ジョンミンという韓国映画界のトップスターが競演。「組織への忠誠」と「義兄弟の絆」の間で引き裂かれる主人公の姿は、ヤンの苦悩と重なる。

孤狼の血(2018年・日本)

「警察小説×仁義なき戦い」と評される日本映画。役所広司演じる型破りな刑事と、松坂桃李演じる新人刑事が、広島の暴力団抗争に巻き込まれていく。善と悪の境界が曖昧になっていく感覚は、『インファナル・アフェア』に通じるものがある。白石和彌監督の容赦ないバイオレンス描写も見どころ。

📝 まとめ

『インファナル・アフェア』は、「潜入捜査もの」というジャンルの最高到達点であり、同時に「自分は何者なのか」という普遍的な問いを投げかける作品だ。

102分という無駄のない構成、トニー・レオンとアンディ・ラウという二大スターの競演、そして「無間地獄」という仏教的テーマの深み。ハリウッドがこぞってリメイクし、いまだに語り継がれる理由がここにある。『ディパーテッド』や『ダブルフェイス』を観た人も、未見の人も、ぜひオリジナルの衝撃を体験してほしい。一度観たら、この「無間地獄」から抜け出せなくなる

⭐ 作品の特徴

項目評価
ストーリー⭐⭐⭐⭐⭐(脚本の完成度は圧巻)
演技⭐⭐⭐⭐⭐(二大スターの競演)
映像⭐⭐⭐⭐☆(屋上シーンは映画史に残る)
音楽⭐⭐⭐⭐☆(哀愁漂うサウンド)
テンポ⭐⭐⭐⭐⭐(102分、一切の弛緩なし)

うさぎ亭的おすすめ度

⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐☆

9.0 / 10

脚本の完成度は10点に近い傑作。「潜入捜査もの」の教科書として、今こそ観るべき一本。

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