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「あなたの行った虐殺を、もう一度演じてみませんか?」
この一言から始まる、ドキュメンタリー史上最も異様な映画がある。1965年、インドネシアで100万人以上が虐殺された「9月30日事件」。その加害者たちに、自らの殺人を「再演」させるという前代未聞の手法で撮られた本作は、「悪とは何か」「なぜ人間は残虐になれるのか」という問いを、観る者の喉元に突きつける。
面白い、面白くないという範疇を超えた作品。だが、人間の本質を知りたいなら、避けて通れない一本だ。
🎬 予告編
📌 この作品を3行で
この作品を3行で
- 100万人虐殺の加害者が、自らの殺人を「映画」として再演
- 嬉々として語る彼らの姿に、人間の「悪の正体」が浮かび上がる
- ラストシーン、40年封印されていた「何か」が決壊する
作品情報
- 作品名:アクト・オブ・キリング(原題:The Act of Killing)
- 公開年:2012年(日本公開:2014年)
- 監督:ジョシュア・オッペンハイマー
- 製作総指揮:ヴェルナー・ヘルツォーク、エロール・モリス
- 上映時間:121分(オリジナル全長版:159分)
- 製作国:デンマーク・ノルウェー・イギリス
📖 『アクト・オブ・キリング』のあらすじ
1965年、インドネシア。軍事クーデターをきっかけに、「共産主義者狩り」と称した大虐殺が始まった。実行したのは軍ではなく、「プレマン」と呼ばれる民間のヤクザ・民兵たち。わずか1年で100万人以上が拷問され、殺された。
そして現在。驚くべきことに、虐殺の実行者たちは「国民的英雄」として権力を握り続けている。アメリカ人監督ジョシュア・オッペンハイマーは、彼らに「当時の虐殺を映画として再現してみないか」と持ちかけた。まるで映画スター気取りで、嬉々として殺人の方法を語り、演じてみせる男たち。だが、その「再演」は、やがて彼らに予想もしなかった変化をもたらしていく。
✨ 『アクト・オブ・キリング』の魅力
ここがすごい!
- 加害者に殺人を再演させる、ドキュメンタリー史上前代未聞の手法
- 「罪の意識」が芽生える瞬間を捉えた、奇跡的なラストシーン
- 「人間は誰でも加害者になり得る」という普遍的恐怖
加害者に殺人を再演させる、前代未聞の手法
本作の最大の衝撃は、その「撮り方」にある。監督のオッペンハイマーは当初、被害者側の取材を試みていた。だがインドネシア政府から接触を禁じられ、逆転の発想で加害者側にカメラを向けた。
「あなたたちの英雄的行為を映画にしよう」と持ちかけると、彼らは喜んで協力した。なぜなら、彼らは今も「正しいことをした」と信じているからだ。針金で首を絞める方法を笑顔で実演し、「殴ると血で汚れるから、この方法にしたんだ」と得意げに語る。この「普通さ」が、最も恐ろしい。彼らは怪物ではない。どこにでもいるおじいさんなのだ。
「罪の意識」が芽生える瞬間を捉えた、奇跡的なラスト
1000人以上を殺した男、アンワル・コンゴ。彼は撮影の中で、自ら被害者役を演じることになる。絞め殺される側を体験した彼の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
そしてラストシーン。かつての殺害現場を訪れたアンワルは、突然嗚咽を漏らし始める。40年以上封印してきた何かが、フィルムの前で決壊する。あの「音」は、人間の魂が軋む音だ。フィクションでは絶対に撮れない、ドキュメンタリーの奇跡がここにある。
「人間は誰でも加害者になり得る」という普遍的恐怖
スタンフォード監獄実験、ミルグラム実験(アイヒマン実験)。権威と環境が人間を怪物に変えることは、心理学的に立証されている。本作は、その理論を「本物の殺人者」で突きつける。
彼らは特別な悪人ではなかった。「そういう時代だった」「命令に従っただけ」。ナチスのSSだった人々も、同じことを言った。自分にだってそういう素地があり、可能性があることを突きつけられる。これこそが、本作が「ホラー映画より恐ろしい」と言われる所以だ。
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こんな方におすすめ!
- 「人間の本質」「善悪の境界」に興味がある人
- ドキュメンタリー映画の新しい可能性を求める人
- 世界史・現代史に関心があり、教科書では学べない歴史を知りたい人
😅 ここが惜しい…
監督の「誘導」を感じる瞬間がある
アンワルの「改心」に向けて、監督が意図的に被害者役を演じさせたり、質問で追い詰めたりする場面がある。「拷問を受けた人の気持ちがわかる」と言うアンワルに、監督は冷たく返す。「いや、あなたは映画だと思って撮っていた。拷問を受けた人たちは殺されると分かっていた。そんな相手の気持ちがわかるはずがない」と。
ドキュメンタリーの「客観性」をどこまで求めるかで評価が分かれるだろう。ただ、この「誘導」があったからこそ、あのラストシーンが生まれたとも言える。
インドネシアの歴史的背景の説明が少ない
9月30日事件の詳細、スカルノからスハルト政権への移行、冷戦構造における日本・アメリカの関与などは、映画内ではほとんど説明されない。予備知識がないと、なぜこのような状況が生まれたのか理解しにくい面がある。
視聴前に「インドネシア 9月30日事件」で軽く調べておくと、より深く作品を理解できるだろう。
ここが残念…
- 監督の意図的な「誘導」が、ドキュメンタリーの客観性を損なうという見方も
- 歴史的背景の説明が少なく、予備知識がないと理解しにくい部分がある
🎭 印象的なシーン・セリフ
「これが我々だと見せなきゃならん」
「これが我々だと見せなきゃならん。未来に残すんだ。大作じゃなくていい。物語を伝えて行くんだ。俺たちが若い頃何をしたのか。」
アンワルが語るこの言葉は、皮肉にも映画というメディアの本質を突いている。歴史を伝えること。それが彼にとっては「英雄譚」であり、観客にとっては「告発」となる。同じ言葉が全く逆の意味を持つ。この構造そのものが、本作の恐ろしさを象徴している。
針金で首を絞める方法を、笑顔で実演するシーン
「殴ると血で汚れるから、針金を首に巻いて締めたんだ」。アンワルはかつての殺害現場で、鼻歌まじりにその方法を再現してみせる。この「普通さ」が最も恐ろしい。彼は怪物ではない。孫を可愛がり、動物を大切にする、どこにでもいるおじいさんだ。
ラストシーン、かつての殺害現場で嗚咽が止まらなくなるアンワル
言葉はない。ただ、身体が拒否反応を起こしている。えずき、嗚咽し、その場にうずくまる。40年以上封印してきた何かが、フィルムの前で決壊する。あの「音」を聞いた瞬間、観客は自分が何を見せられているのか、しばらく理解できないだろう。フィクションでは絶対に撮れない、ドキュメンタリーの奇跡だ。
💭 視聴後の感情
観終わった後、しばらく言葉が出なかった。頭がちゃんと理解しようとするのを拒否する。グロテスクなシーンはほとんどない。それなのに、そこらのホラー映画よりずっと恐ろしくて、残酷に感じた。
「面白かった」とは言えない。だが、「観てよかった」とは言える。人間の負の側面を、ここまで生々しく浮かび上がらせた作品を、私は他に知らない。
こんな方には向かないかも…
- 淡々としたドキュメンタリーが苦手な人
- エンターテインメント性を求める人
- 後味の悪い作品が苦手な人(ただし「胸糞映画」とは違う種類の重さ)
🎬 『アクト・オブ・キリング』が好きなら絶対見るべき3選
ルック・オブ・サイレンス
『アクト・オブ・キリング』の「続編」にして「対」となる作品。同じジョシュア・オッペンハイマー監督が、今度は被害者側の視点から9月30日事件を描いた。兄を殺された眼鏡技師アディが、加害者たちを訪ね歩き、「なぜ兄を殺したのか」と問いかける。加害者視点の本作と、被害者視点の本作。両方観て初めて、この事件の全体像が見えてくる。
CURE キュア
黒沢清監督、役所広司主演の傑作サイコサスペンス。「悪」は伝染する。記憶を失った謎の男と接触した人々が、次々と猟奇殺人を犯していく。人間の中に潜む暴力性、「普通の人」が殺人者になる過程を描いた本作は、『アクト・オブ・キリング』と同じ問いを、フィクションの形で突きつける。
ドッグヴィル
ラース・フォン・トリアー監督、ニコール・キッドマン主演。閉鎖的な村に逃げ込んだ女性を、「善良な市民」たちがじわじわと追い詰めていく。集団の中で人間がいかに残酷になれるかを、舞台劇のようなミニマルな演出で描いた衝撃作。『アクト・オブ・キリング』が描いた「悪の凡庸さ」を、フィクションで体験したいならこの一本。
📺 『アクト・オブ・キリング』はどこで見れる?配信状況
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📊 配信サービス比較
| サービス | 配信状況 | 無料体験 |
|---|---|---|
| Amazon Prime Video | 見放題 | 30日間 |
| U-NEXT | レンタル | 31日間 |
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| Hulu | 配信なし | ー |
| Netflix | 要確認 | ー |
※配信状況は2026年1月時点の情報です。最新の配信状況は各サービスでご確認ください。
📝 まとめ
『アクト・オブ・キリング』は、「面白い」「面白くない」という範疇を超えた作品だ。苦しくなるシーンがほとんど。それでも、人間の負の側面をここまで生々しく浮かび上がらせた作品を、私は他に知らない。
悪とは何か。正義とは何か。なぜ人間は、あまりにも残虐なことをしてしまうのか。本作は答えを与えない。ただ、問いを突きつける。その問いを受け止める覚悟があるなら、これは「観るべき」一本だ。エンドロールに並ぶ大量の「Anonymous」(匿名)の文字が、この映画がいかに危険な告発であるかを物語っている。
⭐ 作品の特徴
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 衝撃度 | ★★★★★ |
| 考えさせられる度 | ★★★★★ |
| ドキュメンタリーとしての革新性 | ★★★★★ |
| エンターテインメント性 | ★★☆☆☆ |
| 万人向け度 | ★★☆☆☆ |
うさぎ亭的おすすめ度
⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐☆☆
8.0 / 10
人間を知るための、避けて通れない一本。