「白石和彌監督が撮る集団抗争時代劇」この言葉だけで、血湧き肉躍るバイオレンスを期待した映画ファンは多いだろう。
だが、見終わった後に残るのは、圧倒的な熱量への感動か、それとも物語の破綻に対する困惑か。
結論から言おう。映画『十一人の賊軍』は、最高のアクションと、ツッコミどころ満載の脚本が同居する「怪作」だ。理屈抜きでド派手な殺し合いが見たいなら必見。しかし、緻密なストーリーを期待すると火傷する。
今回は、そんな本作の「凄まじいアクション」と「残念すぎる脚本」について、忖度なしでレビューしていく。特に、紅一点・なつ役を演じた鞘師里保の名演は、この映画の最大の収穫と言っても過言ではない。
この作品を3行で
- 血と泥にまみれた集団抗争アクション
- 脚本の粗さが目立つ「惜しい」大作
- 鞘師里保の演技がMVP級の輝き
🎬 予告編
予告編の熱量は本物だ。本編ではさらに、この10倍の火薬と血糊が飛び交うことになる。
作品情報
- 作品名:十一人の賊軍
- 公開年:2024年
- 監督:白石和彌
- 原案:笠原和夫
- 脚本:池上純哉
- 上映時間:155分
- 制作:東映
📖 『十一人の賊軍』あらすじ(ネタバレなし)
舞台は1868年、戊辰戦争の真っ只中。新発田(しばた)藩は、新政府軍と旧幕府軍の板挟みにあい、存亡の危機に瀕していた。藩の重役たちは、新政府軍への寝返りを画策する時間を稼ぐため、「死刑囚たちに砦を守らせる」という非情な作戦を立案する。
集められたのは、駕籠かきの政(山田孝之)、剣術道場の息子・鷲尾兵士郎(仲野太賀)、そして火付けの罪で捕らわれたなつ(鞘師里保)ら、11人の罪人たち。「砦を守り抜けば無罪放免」という甘い言葉を信じ、彼らは圧倒的多数の官軍に立ち向かうことになるが、その裏には藩の恐るべき陰謀が隠されていた——。
✨ アクションと演技は満点!本作の魅力
ここがすごい!
- 痛みが伝わる!白石和彌流の容赦ないアクション
- 「武士」ではない「罪人」たちの予測不能なドラマ
- なつ役・鞘師里保の魂を削るような名演
魅力①:容赦のないアクション描写
『孤狼の血』で観客の度肝を抜いた白石和彌監督の手腕は、時代劇になっても健在だ。綺麗な殺陣(たて)ではない。「痛み」を感じるような、泥臭く生々しい殺し合いが延々と描かれる。
刀で斬られれば肉が裂け、爆発すれば体が吹き飛ぶ。綺麗事を一切排除した戦場のリアリティは、視覚的な迫力が満点だ。特にクライマックスの乱戦は、スクリーン越しに血の匂いが漂ってきそうなほどの熱量で、アクション映画好きなら間違いなく満足できる。
魅力②:予測不能な「罪人」たちのドラマ
本作の主人公たちが「武士」ではなく「罪人」である点が、物語に緊張感を与えている。彼らに忠義などない。あるのは「保身」と「欲望」だけだ。
隙あらば逃げようとし、仲間すら裏切ろうとする。その品行方正ではない人間臭さが、「次は誰が裏切るのか?」「どうやって切り抜けるのか?」という展開の読めなさに繋がっている。山田孝之演じる政の卑屈さと、仲野太賀演じる鷲尾の真っ直ぐすぎる狂気の対比も見事だ。
魅力③:鞘師里保(なつ役)の圧倒的な名演
そして何より強調したいのが、元モーニング娘。の鞘師里保の演技だ。この規模の超大作映画で、紅一点の「なつ」という重要な役どころを任された彼女だが、その期待を遥かに超える仕事をしている。
単なる「華」としてのアリバイ的なヒロインではない。泥と血にまみれ、男たちと対等に渡り合いながら、確かな存在感を放っている。彼女の目力が、絶望的な状況下での「生への執着」を雄弁に物語っていた。「白石監督、彼女を見つけてくれてありがとう!」と叫びたくなるほどの名演。彼女を見るためだけにこの映画を見ても損はない。
こんな方におすすめ!
- 理屈抜きでド派手なチャンバラアクションを楽しみたい人
- 白石和彌監督特有のバイオレンス描写が好きな人
- 山田孝之・仲野太賀ら豪華キャストの演技合戦が見たい人
- 女優・鞘師里保の覚醒を目撃したい人
📺 『十一人の賊軍』はどこで見れる? 配信状況
視聴はこちらから
- U-NEXT:ポイント視聴 / レンタル(初回600ptで視聴可能)
- Amazon Prime Video:レンタル / 購入
- FOD:レンタル
- Netflix:配信なし(要確認)
📊 配信サービス比較
| 配信サービス | 配信状況 | 特典 |
|---|---|---|
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😅 ここが惜しい…脚本の「雑さ」がノイズに
アクションと演技は最高だ。しかし、正直に言わなければならない。本作は「脚本(ストーリー)」に致命的な論理的欠陥(ツッコミどころ)が多すぎる。
問題点①:無意味な籠城戦
そもそも論になってしまうが、「砦を守れ」という作戦自体に無理がある。好戦的で統率の取れない賊軍を砦に入れるリスクを冒さずとも、「官軍が来るまで砦付近で待機しろ」と交渉して逃せば、一滴も血を流さずに済んだ話ではないか?
物語を転がすための「無理やりな設定」が見え透いており、見ている途中で「これ、何のために戦ってるんだっけ?」と冷静になってしまう瞬間がある。
問題点②:主人公の秘密と官軍の無能さ
山田孝之演じる政が抱える「官軍にとって致命的な秘密」。これをもっと早くバラしていれば、あそこまでの惨劇は回避できたはずだ。彼の沈黙が事態を悪化させており、主人公に感情移入しづらい。
また、敵である官軍も無能すぎる。クライマックスの大反撃で、一本道である吊り橋に見張りを一人も置いていないのは、軍隊としてありえない。「ご都合主義」と言われても仕方ない展開が散見される。
ここが残念…
キャラクターの掘り下げ不足も痛い。タイトル通り「11人」もいるため、一人ひとりの背景描写が薄くなってしまった。結果、誰が死んでも「悲劇」として機能せず、「誰だっけ?」と思っている間に死んでいくのが勿体ない。
🎭 印象的なシーン
「死んでいった者たちのためにも、生きろ」
特に印象に残ったのは、決戦前夜の宴会シーンだ。政(山田孝之)となつ(鞘師里保)ら罪人たちが、一時の平穏の中で心を通わせる。明日には死ぬかもしれない極限状態だからこそ、生まれや罪を超えた「人間としての交流」が際立っていた。この静寂があるからこそ、その後の惨劇がより一層悲惨に映る。
💭 視聴後の感情
見終わった直後の感想は「疲れた…」の一言。155分という長尺に加え、救いのない展開の連続に精神力を削られる。だが、不思議と嫌な疲れではない。「凄いものを見た」という満足感と、「もっと上手くやれただろ!」という脚本への苛立ちが入り混じる、奇妙な余韻が残る作品だった。
🎬 『十一人の賊軍』が好きなら絶対見るべき3選
『十一人の賊軍』には不満も残ったが、あの「泥臭い熱量」は嫌いじゃない…。そんなあなたに、より脚本の完成度が高く、さらに刺激的な3作品を紹介する。
1️⃣ 孤狼の血(2018年)
白石和彌監督の最高傑作。警察とヤクザ、それぞれの覚悟がぶつかり合う心理戦は、『十一人の賊軍』と比較してもストーリー構成の完成度が段違いに高い。登場人物の掘り下げも深く、役所広司の圧倒的な存在感に最後まで引き込まれること間違いなしだ。
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2️⃣ 首(2023年)
北野武監督が描く戦国バイオレンス。「賊軍」以上に容赦のない描写がありつつ、しっかりエンタメとして成立している点は流石の一言。「欲望と裏切りの世界観」を楽しみたいなら、こちらの映画の方がよりエグく、よりドライな無常観を味わえる。
配信情報:Netflix(見放題) / U-NEXT(レンタル)
3️⃣ イングロリアス・バスターズ(2009年)
クエンティン・タランティーノ監督作。「ナチスを殺すために集められたならず者部隊」という設定は、まさに洋画版『賊軍』。だがこちらは、タランティーノ特有の「ぶっ飛んだ軽快さ」があり、陰惨になりすぎず痛快に楽しめる。作戦会議の緊張感と、爆発的な暴力の解放のカタルシスを味わってほしい。
配信情報:U-NEXT(見放題) / Netflix(見放題)
📝 まとめ:粗はあるが、劇場で見るべき熱量がある
『十一人の賊軍』は、脚本の粗さが目立つ惜しい作品だ。しかし、それを補って余りある役者陣の熱演と、画面から溢れ出るエネルギーは本物である。
細かい理屈は抜きにして、豪華俳優陣によるド派手なチャンバラアクションを楽しみたいなら、決して損はさせない。特に鞘師里保のファンなら、これは必修科目だ。
うさぎ亭的おすすめ度
⭐⭐⭐⭐☆☆☆☆☆☆
4.0 / 10
脚本の論理的欠陥がノイズになり評価ダウン。ただし、アクションと鞘師里保は満点評価!
「ツッコミながら見る」のが正解の楽しみ方だ!