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「狂ってるのは僕か、それとも世間か」——この問いが、2時間の間ずっと頭から離れなかった。
2019年、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、世界中に衝撃を与えた『ジョーカー』。これは「鑑賞」ではなく「目撃」と呼ぶべき体験だった。アーサー・フレックという一人の男が、社会に虐げられ、裏切られ、そして「ジョーカー」へと変貌していく。その過程を追ううちに、観客は否応なく気づかされる。自分の中にも、数パーセントのジョーカーがいるということに。
🎬 予告編
📌 この作品を3行で
- 社会に虐げられた男が「悪のカリスマ」へと変貌する誕生譚
- ホアキン・フェニックスの怪演がアカデミー賞主演男優賞を獲得
- 観客の倫理観を揺さぶる「劇薬」のような映画体験
作品情報
- 作品名:ジョーカー(原題:Joker)
- 公開年:2019年
- 監督:トッド・フィリップス
- 出演:ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロ、ザジー・ビーツ
- 上映時間:122分
- 受賞:アカデミー賞主演男優賞・作曲賞、ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞
📖 心優しき男が「悪のカリスマ」になるまでのあらすじ
1980年代、荒廃したゴッサム・シティ。アーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)は、病弱な母を介護しながらピエロの仕事で日銭を稼ぐ、心優しい男だった。コメディアンになることを夢見ているが、突発的に笑いが止まらなくなる神経疾患を抱え、周囲からは気味悪がられている。
ある夜、地下鉄で絡んできたエリートサラリーマンたちを射殺したことが、彼の人生を決定的に変える。その事件は「ピエロが富裕層を殺した」として報道され、格差に苦しむ市民たちの間で熱狂的に支持されていく。自分の存在を初めて「認められた」アーサーは、徐々に狂気の階段を降りていき——やがて、悪のカリスマ「ジョーカー」として覚醒する。
✨ 衝撃の映画体験——『ジョーカー』の魅力
ここがすごい!
- ホアキン・フェニックスの「憑依」レベルの怪演
- 「誰もがジョーカーになりうる」という恐ろしいリアリティ
- 映画史に残る「階段ダンス」シーン
- スコセッシ作品へのオマージュと現代社会への接続
ホアキン・フェニックスの「憑依」としか言いようのない怪演
ホアキン・フェニックスは本作のために23kgもの減量を敢行した。浮き出た肋骨、病的に痩せ細った体躯、そして何より——笑いながら泣く、という矛盾した感情を同時に表現する演技。アカデミー賞主演男優賞は必然の結果だった。
彼の演技は「演技」という言葉では足りない。「憑依」だ。アーサーが発作的に笑い出すたびに、その笑い声の奥にある悲鳴が聞こえてくる。彼は笑っているのではない。泣いているのだ。その表現が、観客の胸を締め付ける。
「誰もがジョーカーになりうる」という恐ろしいリアリティ
従来のジョーカー像——化学薬品に落ちて肌が白くなった、あるいは生まれついての狂人——とは全く異なるアプローチがここにある。本作のアーサーは、超能力も持たなければ、劇的な事故にも遭わない。ただ、社会に虐げられ、裏切られ、少しずつ壊れていく「普通の男」だ。
だからこそ恐ろしい。いけないと思っていても、嫌悪より共感が先立ってしまう。誰の心にもアーサーがいるからこそ、奥底の部分で共鳴してしまう。これは他人事ではないのだ。
映画史に残る「階段ダンス」シーン
ブロンクスにある長い階段。アーサーは序盤、この階段を肩を落として重い足取りで登っていく。しかし終盤、ジョーカーとして覚醒した彼は——同じ階段を、踊りながら降りていく。
抑圧からの解放、狂気への転落、美しさと恐ろしさの同居。このシーンは映画史に残る名場面として語り継がれるだろう。ゲイリー・グリッターの「Rock and Roll Part 2」に乗せて踊るジョーカーの姿は、観る者に奇妙な高揚感をもたらす。それが怖い。
スコセッシ作品へのオマージュと現代社会への接続
本作には、マーティン・スコセッシ監督の『タクシードライバー』(1976)と『キング・オブ・コメディ』(1982)への明確なオマージュがある。どちらもロバート・デ・ニーロ主演作であり、本作でデ・ニーロが司会者マレー・フランクリン役として出演しているのは象徴的だ。
『キング・オブ・コメディ』で売れないコメディアンを演じたデ・ニーロが、本作では「成功したコメディアン」として登場する。この立場の逆転が、作品に重層的な意味を与えている。社会に疎外された男の狂気という普遍的テーマが、1970年代のニューヨークから2019年の世界へと、そして今この瞬間へと接続されていく。
🎭 印象的なシーン・セリフ
「狂ってるのは僕か、それとも世間か」
この問いかけは、アーサーから観客への問いでもある。本作を観終わった後、この言葉が頭から離れなくなる。
「僕の人生は悲劇だと思っていた。でも今わかった。僕の人生は喜劇だ」
チャップリンの名言「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ」を反転させた、絶望の果ての「悟り」。笑いと狂気の境界が溶けていく瞬間だ。
そして、マレー・フランクリンの番組での生放送シーン。緊張感の極致。「セブン」のラストシーンに匹敵する——いや、それを超えるかもしれない衝撃がそこにある。
💭 視聴後の感情——「目撃」という体験
ラース・フォン・トリアーの『ドッグヴィル』を観た時に近い感覚があった。社会の不条理を、主人公の視点に寄り添いながら追体験する。彼女(グレース)や彼(アーサー)の近くにずっといると、最後に訪れる「復讐」の瞬間に、妙な高揚感が自分の中にも生まれてしまう。
いつの間にか殺人者に魅了されている自分に気づき、愕然とする。これは映画の「力」であると同時に、人間の心の「闇」を映し出す鏡でもある。
今すぐ観たい方はU-NEXTで視聴可能(31日間無料)。
こんな方におすすめ!
- スコセッシ作品(タクシードライバー、キング・オブ・コメディ)が好きな人
- 社会の不条理や格差問題に関心がある人
- 「悪役」の内面に共感してしまう自分を発見したい人
😅 些細だが、気になる点
「ジョーカーじゃなくてもよかったのでは」問題
ここが惜しい…
- DCコミックスの「ジョーカー」である必然性がやや薄い
- 現実と妄想の境界が曖昧すぎて混乱する人も
正直に言えば、これは「ジョーカー」というキャラクターを使わなくても成立する社会派ドラマだ。ウェイン家との関係性など、バットマンの文脈を外せば、独立した傑作として観ることもできる。それが本作の「強さ」でもあり、従来のジョーカーファンにとっては物足りなさにもなりうる。
また、現実と妄想の境界が意図的に曖昧にされているため、「結局どこまでが本当だったの?」とモヤモヤする人もいるだろう。考察好きには堪らないが、明確な答えを求める人には向かないかもしれない。
ただ、これらは些末な指摘だ。本作の価値を損なうものではない。
こんな方には向かないかも…
- 従来の「無差別快楽殺人鬼」としてのジョーカーを期待する人
- 精神的に重い作品が苦手な人(覚悟が必要)
- 明確な「答え」を求める人
サウンドトラック購入先
- Spotify:配信あり
- Apple Music:配信あり
作曲:ヒドゥル・グドナドッティル(アカデミー賞作曲賞受賞)
🎬 『ジョーカー』が好きなら絶対見るべき4選
ダークナイト(2008)
ヒース・レジャーが命を削って演じた「もう一人のジョーカー」。本作のホアキン版とは全く異なるアプローチ——純粋な「混沌の化身」としてのジョーカーがここにいる。二人のジョーカーを比較することで、このキャラクターの奥深さがより理解できるだろう。クリストファー・ノーラン監督の傑作。
ドッグヴィル(2003)
ラース・フォン・トリアー監督、ニコール・キッドマン主演。社会の不条理、善意の裏側にある悪意、そして最後に訪れる「復讐」のカタルシス——『ジョーカー』と共通するテーマが貫かれている。主人公に寄り添ううちに、観客もまた「狂気」の側に引きずり込まれていく。
タクシードライバー(1976)
『ジョーカー』の精神的源流。マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演の金字塔。ベトナム帰還兵のタクシードライバーが、荒廃したニューヨークで徐々に狂気に蝕まれていく。「You talkin' to me?」の名セリフは映画史に刻まれている。
キング・オブ・コメディ(1982)
『ジョーカー』と最も直接的な関連を持つ作品。売れないコメディアンが、憧れの司会者を誘拐してテレビ出演を果たそうとする。デ・ニーロが演じる「勘違い男」パプキンは、アーサー・フレックの原型と言っていい。本作を観てから『ジョーカー』を観直すと、新たな発見がある。
📺 『ジョーカー』はどこで見れる?配信状況
視聴はこちらから
- U-NEXT (31日間無料体験):見放題
- Hulu:見放題
- Netflix:見放題
- Amazon Prime Video (30日間無料体験):レンタル
📊 配信サービス比較
| サービス | 配信状況 | 無料体験 |
|---|---|---|
| U-NEXT | 見放題 | 31日間 |
| Hulu | 見放題 | なし |
| Netflix | 見放題 | なし |
| Amazon Prime Video | レンタル | 30日間 |
👉 各サービスの詳細な違いはVOD比較7社徹底解説を参照。
📝 まとめ——社会が生み出す「怪物」
『ジョーカー』は、単なるヴィラン誕生譚ではない。社会に虐げられた者が、どのようにして「怪物」になるのか——その過程を、圧倒的なリアリティで描いた社会派ドラマだ。
重い作品であり、観客に苦い感情を植え付ける。覚悟が必要だ。実際、本作に影響を受けた(と称する)愉快犯が現実世界に現れたように、社会に対してリスクを孕んだ映画でもある。しかしだからこそ、観る価値がある。「狂っているのは僕か、それとも世間か」——この問いは、今を生きる私たち全員に向けられている。
⭐ 作品の特徴
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| ストーリー | ★★★★★ |
| 映像美 | ★★★★★ |
| 演技 | ★★★★★ |
| 音楽 | ★★★★★ |
| 再視聴性 | ★★★★☆ |
うさぎ亭的おすすめ度
⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐☆
9.2 / 10
あなたの中のジョーカーが、目を覚ます。