『ジョン・ウィック』感想|どこで見れる?配信情報とガンフーの衝撃

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正直、期待していなかった。「犬を殺されたから復讐する映画」——その一文だけ聞けば、B級アクションを想像しても無理はない。だが開始10分でその偏見を恥じた。この作品を観たのは、スピンオフ映画『バレリーナ』の配信が話題になっていた頃だった。シリーズの原点を押さえておこうという軽い気持ちで再生ボタンを押したのだが、気づけば前のめりになっていた。

『ジョン・ウィック』は、キアヌ・リーブスの「3つ目の当たり役」であり、アクション映画の文法そのものを書き換えた作品だ。『スピード』『マトリックス』に続き、彼がまたしてもジャンルの転換点に立っている。ただし、知的な興奮や物語の厚みを求める人には注意が必要な作品でもある。そのあたりも含めて、正直に書く。

🎬 予告編

この作品を3行で

  • 銃×柔術=「ガンフー」誕生の衝撃
  • 犬と車だけで100人殺す、潔すぎる復讐劇
  • キアヌ・リーブス第3の当たり役、ここから始まる

作品情報

  • 作品名:ジョン・ウィック(John Wick)
  • 公開年:2014年
  • 監督:チャド・スタエルスキ
  • 脚本:デレック・コルスタッド
  • 出演:キアヌ・リーブス、ミカエル・ニクヴィスト、ウィレム・デフォー、アルフィー・アレン、イアン・マクシェーン
  • 上映時間:101分
  • ジャンル:アクション/スリラー

📖 スカッとするのに切ない、復讐映画のあらすじ

裏社会で「ババ・ヤガ(ブギーマン)」と恐れられた伝説の殺し屋、ジョン・ウィック。愛する妻ヘレンとの出会いをきっかけに殺し屋稼業から足を洗い、穏やかな日々を送っていた。しかし、ヘレンは病に倒れ帰らぬ人に。悲しみに暮れるジョンのもとに届いたのは、ヘレンが生前に用意していた一匹のビーグル犬デイジーだった。「あなたには希望が必要」という手紙とともに。

だが、その希望すらも奪われる。ロシアンマフィアのボスの息子ヨセフが、ジョンの愛車を奪い、デイジーを殺害。妻の最後の贈り物を踏みにじられたジョンは、封印していた殺し屋としての本能を解き放ち、たった一人でロシアンマフィアに戦いを挑む

✨ 「ガンフー」と「キアヌの最高到達点」——この作品の魅力

ここがすごい!

  • 「ガンフー」——銃×柔術が生んだアクション革命
  • 犬と車だけで成立する、私的すぎる復讐の没入感
  • 「静」から「動」への落差が作品を一段上に押し上げる

「ガンフー」——銃×柔術が生んだアクション革命

この作品最大の発明は、「ガンフー」と呼ばれる新しいアクション文法を確立したことだ。GUN(銃)とKUNG FU(功夫)を組み合わせた造語だが、実際にジョンが使う体術はカンフーというより柔術や柔道に近い。相手を投げ、組み伏せ、至近距離から頭部を撃ち抜く。この一連の動作が、長回しのカメラに収められる。

アクション映画の系譜を辿れば、香港映画のジョン・ウー監督が二丁拳銃の美学を築き、『マトリックス』がそれをハリウッドに持ち込んだ。『リベリオン』の「ガン=カタ」が銃と武術の融合にリアリティをもたらそうとした。本作はその延長線上にありながら、決定的に違う点が一つある。スピード感ではなく、「重さ」と「痛さ」で見せるということだ。

キアヌの動きは、正直に言えば、ジェイソン・ステイサムやドニー・イェンと比べると速くはない。だが、ダメージを受けながらも立ち上がり、不器用でも確実にトドメを刺していく姿には、他のアクション映画にはない生々しい説得力がある。一人の敵に4発、5発と撃ち込む執念。弾数に糸目をつけない、確殺への意志。これがプロフェッショナルのリアリティなのだと、本作は身体で教えてくる。(ここで白状すると、クラブでの銃撃戦では、気づいたら手に汗をかいていた。文字通り。)

『ボーン・アイデンティティ』以降流行した「短いカット割りでスピード感を出す」手法とは真逆の、長めの編集で接近戦を見せるスタイル。これは監督のチャド・スタエルスキが『マトリックス』でキアヌのスタントダブルを務めていたからこそ辿り着いた境地だろう。スタント出身の監督だから、ごまかさない。ごまかせないことを、そのまま武器にした。

犬と車だけで成立する、私的すぎる復讐の没入感

この映画の復讐動機は、国家の存亡でも正義の実現でもない。犬と車。それだけだ。この潔さが、観る側の共感を最大化している。

亡き妻が残した子犬デイジーは、ジョンにとって「最後の希望」そのものだった。「あなたには希望が必要」というヘレンの手紙。その希望を、何も知らないマフィアのバカ息子が踏みにじる。理屈ではない。「家族同然の犬を殺されたら、あなたならどうする?」——この問いに、多くの観客が「そりゃキレるだろ」と即答した。その瞬間、ジョンの味方になる。

正義対悪という構造にしていない点も巧みだ。ジョンが正しいわけでも、マフィアが絶対悪なわけでもない。ただ、大切なものを奪われた男が怒り狂っている。シンプルだからこそ、サクッと観られる。何も考えずに主人公サイドに肩入れできる。この設計は、復讐映画として本当に優秀だと思う。

「静」から「動」への落差が作品を一段上に押し上げる

序盤のジョンは、ただの悲しい中年男だ。妻を失い、子犬と静かに暮らしている。息子に「これ、盗まれた車を取り戻す話?」と言わせるほど地味な導入。だが、この「静」があるからこそ、復讐が始まってからの「動」が際立つ。

ヴィゴがジョンの名前を聞いた瞬間に顔色を変える場面。「鉛筆だぞ!」とその恐ろしさを語る場面。アクションシーンよりもこちらのほうが怖いと感じたのは筆者だけではないはずだ。言葉だけで「この男はどれほどの存在なのか」が伝わる。この演出の巧さが、単なるアクション映画を一段上に持ち上げている。

🎭 印象的なシーン

「ある時彼はバーで3人殺した……鉛筆を使って……鉛筆だぞ!?」

ロシアンマフィアのボス、ヴィゴが息子に向かってジョン・ウィックの恐ろしさを語るこの場面。銃弾一発も飛ばない。アクションは一切ない。なのに、映画全編で最も背筋が凍るシーンだった。名前を口にするだけで震えるマフィアのボスを見て、「この映画はただのアクション映画じゃない」と確信した瞬間だ。

クラブでの銃撃戦も忘れがたい。重低音の音楽とネオンの光が交錯する中、ジョンが敵を一人ずつ処理していく。音楽のビートとアクションが同期する瞬間があり、映画を観ているというより、ライブパフォーマンスを目撃している感覚に近かった。

そして、殺された子犬デイジーが、最期の力でジョンのもとへ這い寄ろうとしていたという描写。このディテールは卑怯だ。観た人間の怒りのスイッチを完全に入れにくる。筆者は犬を飼ったことがないのに、このシーンで胸が詰まった。飼っている人なら、もっとだろう。

💭 視聴後の感情

観終わった後、妙な爽快感と、わずかな虚しさが同居していた。100分間、ジョンと一緒に怒り、一緒に殺し、一緒にボロボロになった。だが、どれだけ殺しても妻は帰ってこないし、デイジーも戻らない。この虚しさを作品が自覚的に描いているのかどうか、正直まだわからない。わからないが、ラストでジョンが保護犬施設からピットブルを連れ帰る場面に、少しだけ救われた気がしている。

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こんな方におすすめ!

  • 『マトリックス』が好きだったが、最近のキアヌに何を観ればいいかわからない人
  • 何も考えずにスカッとするアクション映画を探している人
  • アクション映画のアクションに「嘘っぽさ」を感じて冷めがちな人

😅 ここが惜しい……キアヌは最高、でも脳は暇

ここまで褒めてきたが、一つだけ引っかかった点がある。いや、一つではない。正直に書く。

ストーリーの薄さと「とんでも映画」感

ここが残念…

  • ストーリーが薄く、中盤以降にアクションの既視感が出る
  • 最大のヘイト対象・ヨセフの死があっさりしすぎる
  • ラストの殴り合いがガンフーの切れ味と温度差がある

この映画にストーリーの厚みを期待してはいけない。復讐する、殺す、終わり。構造はそれだけだ。潔いと言えば潔いのだが、101分この構造だけで走ると、中盤あたりからアクションに既視感が出てくる。同じパターンの敵が現れ、同じように倒される。強キャラとの差別化がもう少しあれば、緊張感が最後まで持続したはずだ。

そしてこれを書くか迷ったが、マフィアのバカ息子を筆頭に、登場人物の行動がかなり「とんでも」寄りだ。『マトリックス』のような知的な興奮——哲学的問い、世界の構造を揺さぶるような仕掛け——は、この作品にはない。筆者の好みからすると、そこにズレがあることは否めない。

最大のヘイト対象であるヨセフが、散々観客の怒りを溜めたのに一瞬で殺される点も惜しい。もう少しじわじわと、自分の行動を後悔する過程が欲しかった。それから、スタイリッシュなガンフーの連続の後に来るラストの雨中の殴り合い。格闘ゲームの横画面のようなショットは嫌いではないが、それまでの切れ味とのギャップに戸惑う人もいるだろう。

ただ、それでもこの映画が好きだと言い切れるのは、「最高のキアヌが観られる」という一点で全てが帳消しになるからだ。理屈ではない。

こんな方には向かないかも…

  • 物語の深みやメッセージ性を重視する人
  • 動物が傷つくシーンが絶対に無理な人(序盤注意)
  • 暴力描写が苦手な人(R15+指定作品)

サウンドトラック購入先

🎬 『ジョン・ウィック』が好きなら絶対見るべき3選

96時間

「怒らせてはいけない男」映画の元祖格。リーアム・ニーソンが娘を誘拐された元CIA工作員を演じ、96時間のタイムリミットで犯人を追い詰める。ジョン・ウィックが「犬の復讐」なら、こちらは「娘の救出」。動機の切実さと、圧倒的な実力差で敵を蹂躙していく快感は共通している。ジョン・ウィックのレビューでも最も多く比較対象として挙げられていた作品だ。

マトリックス

ジョン・ウィックのDNAはここにある。キアヌ・リーブスとチャド・スタエルスキ監督が出会ったのがこの作品だ。香港映画のアクション美学をハリウッドに持ち込み、「バレットタイム」という映像革命を起こした1999年の金字塔。ジョン・ウィックのガンフーは、マトリックスのアクション遺伝子を正統進化させたものだと言っていい。ただし本作は、アクションだけでなく哲学的な問いも内包している。「知的な興奮」を求めるなら、こちらのほうが刺さるはずだ。

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Mr.ノーバディ

ジョン・ウィックと同じ脚本家デレック・コルスタッドが手がけた作品。ボブ・オデンカーク演じる「さえないオヤジ」が、実は元凄腕の工作員だったという設定。ジョン・ウィックが「スタイリッシュでしっとり」なら、こちらは「カラッとしていて笑える」。同じ「舐めてた相手が実はヤバかった」系でも、こちらはコメディ要素が強く、違う味わいが楽しめる。2026年10月には続編の日本公開も控えている。

📺 『ジョン・ウィック』はどこで見れる? 配信状況

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📊 配信サービス比較

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📝 まとめ

『ジョン・ウィック』は、アクション映画に新しい文法を持ち込んだ作品だ。ガンフーという発明、キアヌ・リーブスという存在、そしてコンチネンタル・ホテルに代表される裏社会の世界観。この3つが噛み合ったとき、2014年のアクション映画は確かに変わった。「怒らせてはいけない男」というジャンルの決定版であり、キアヌの復活作であり、シリーズ4部作と数々のスピンオフに繋がる原点。その全てが、この101分に詰まっている。

ただ、筆者の正直な感想として、この作品が「私の好きな映画か」と問われると、少し言葉に詰まる。最高のキアヌが観られる。ガンフーの衝撃は本物。でも、物語に知的な奥行きを求める自分には、少し物足りなさが残った。観終わった翌日、ふとマトリックスを観返したくなったのは、たぶんその裏返しだ。それでも、人にすすめるかと聞かれれば、間違いなく「観てほしい」と答える。この矛盾ごと、この作品の魅力なのだと思う。

⭐ 作品の特徴

評価項目コメント
アクションガンフーの発明。長回し×近接戦闘の臨場感は唯一級
ストーリーシンプルすぎるが、復讐動機の共感力は高い
映像美褪せた色調とネオンのコントラストが独特の雰囲気
音楽クラブシーンの音ハメ演出が秀逸
演技キアヌの寡黙な佇まいが完璧にハマっている
世界観コンチネンタル・ホテル、金貨、掃除屋——中二心が鳴り止まない
テンポ前半は完璧。後半にやや既視感あり

うさぎ亭的おすすめ度

⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐☆☆☆

6.5 / 10

最高のキアヌと、最薄のストーリー。この矛盾が、愛おしい。