ロッキーとクリード全9作の見る順番|スタローンの50年が、そのまま9本になっている

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ロッキー・バルボアは、シルヴェスター・スタローンがその年齢で抱えていたものを、そのつど預けてきた場所だ。30歳で何者でもなかった年に書かれた1本があり、頂点にいた年には頂点にいる男の話が書かれ、44歳のときには成功が奪っていくものの話が、60歳のときにはもう終わったと見なされた男の話が書かれている。9本を公開順に通すと、映画が9本並んでいるというより、一人の人間が50年かけて書き足してきた連作を読んでいる感覚に近くなる。

うさぎ亭ではロッキー6作とクリード3作、あわせて9本ぶんの記事を書いてきた。1作目から順に観て、1本ずつ感想を残している。この記事は、9本を通し終えたいまの立場で「なぜ50年続いたのか」「9本を通すと何が残るのか」「どの順番で、どこで観ればいいのか」をまとめ直したものだ。

個別の作品の細かい話は各レビューに置いてある。ここでは、9本を一続きで観た人にしか見えない部分だけを書く。

ロッキー ポスター
出典:TMDB

🔥 なぜ50年続いたのか

30歳が書いた話は、30歳の男の話だった

1976年、スタローンは端役しか回ってこない30歳の俳優だった。脚本を書き上げ、その権利を売る条件として自分の主演を譲らなかった。製作費はおよそ100万ドル、撮影は28日で終わっている。

そのロッキーがリングに求めたものは、勝利ではない。最後のゴングまで立っていられるかどうか、その一点だけだ。何者かになれるかどうかではなく、自分で自分をどう見るかを賭けている。書いた人間が同じ場所に立っていなければ、こういう賭け方は思いつかない。

2作目も同じ位置から書かれている。1作目が当たったあと、彼が主演した『F.I.S.T.』と『パラダイス・アレイ』(ともに1978年)は、1作目のようにはならなかった。一度当てた人間が、次で当たらない。その数年に、引退したロッキーが台本を読めずに仕事を降ろされ、就いた職も景気の都合で消えていく前半が書かれている。作った人と作られた話が、同じ年に同じことをやっている。

頂点にいた10年は、頂点にいる男の話になった

3作目と4作目は「シリーズが軽くなった時期」として語られることが多い。9本を通すと、その見方は少し変わる。

3作目のロッキーは10度の防衛を重ね、CMに出て、フィラデルフィア美術館の前に自分の銅像が建つところまで来ている。そして物語は、その状態で何が抜け落ちたかを扱う。かつて持っていた目つきが、いまはもう無い。4作目のロッキーは国を背負わされ、勝つことを期待される側に立っている。

これは、そのときのスタローン本人が置かれていた場所とほぼ同じだ。3作目が公開された1982年は『ランボー』の1作目にも主演した年で、彼はアクション映画の中心にいた。守るものができた人間が、守りに入った王者の話を書いている。上り調子の10年に、その副作用のほうを書いている。成功譚をもう一度やることもできたはずの位置で、勝ち続けると何が抜け落ちるかという話を選んでいる。

だからこの2本も、他の巻と同じことをしている。シリーズが彼から離れた時期というものが、9本のどこにも見当たらない。

44歳の喪失、60歳の再起、69歳の継承

5作目は、脳に損傷が見つかり、資産が消え、家を手放し、育てた弟子と決裂する話だ。公開は1990年、彼は44歳。シリーズは前作で3億ドルを稼ぎ、興行として完全に回っていた。その真ん中で、成功が持っていくものを105分かけて書いている。手に入れた側の人間が書いたからこそ出てくる題材で、上がっていく途中では思いつかない。

6作目の『ロッキー・ザ・ファイナル』では60歳になっていた。妻を亡くし、店で昔話をして暮らす男が、周囲から「あの人はいつまで昔の話をしているのか」という目で見られる。同じ年、60歳でボクシング映画をもう一度撮ると言い出した彼に、業界が向けた視線もほぼ同じものだった。彼はそれを回想で誤魔化さず、老いた身体をそのまま撮っている。

そして2015年、69歳で教える側に回った。『クリード チャンプを継ぐ男』でゴールデングローブ賞助演男優賞を受け、アカデミー賞にも3度目のノミネートを受けている。1977年に『ロッキー』で主演男優賞と脚本賞の候補になりながら、どちらも受賞を逃してから39年が経っていた。続く『炎の宿敵』では脚本にも名を連ね、ドラゴ親子という敵側の30年を書いている。

人生の各段階が、そのつど1本になっている。50年続いた理由をひとつ挙げるなら、ここだと思う。観る側も、自分がいま立っている場所によって刺さる巻が変わる。20代で観たときの1作目と、40代で観たときの5作目は、同じシリーズの話とは思えないほど届き方が違う。

✨ 9本を通して残る魅力

戦う理由が、毎回リングの外に置かれている

9本を並べて気づくのは、主人公が「勝つため」だけに戦った回が無いことだ。1作目は自分がゴロツキではないと確かめるため。2作目はあの一戦が事故ではなかったと確かめるため。3作目は失った目つきを取り戻すため。6作目は身体に残っているものを出しきるため。クリードのアドニスに至っては、父の名前を自分のものとして名乗れるようになるまでが全部だ。

この置き方には副作用がある。判定が出た瞬間に話が終わらない。勝敗はあくまで手続きで、本題はもう少し手前で決着しているので、リングを降りたあとの数分に重心が残る。だから9本とも、いちばん覚えている場面が試合ではない。スケートリンク、砂浜、雪山の頂上、街灯の下の会話、黙って走る親子。長く残るのはそちらだ。

負けた側を、必ず次の作品で拾い直す

1作目で勝ったアポロは、2作目で「無名を倒しきれなかった王者」として疑われる側に回る。3作目ではその二人が同じコーナーに立つ。4作目でロッキーに敗れたドラゴは、33年後の『クリード 炎の宿敵』で、国からも家族からも見放された30年を背負って戻ってくる。5作目で袂を分かった弟子の一件は、20年後にアドニスの指導を渋る理由として効いてくる。

勝った瞬間を頂点として扱わないことが、9本を1本につないでいる糸になっている。誰かが勝てば誰かが負けるという当たり前の事実を、次の作品の出発点として毎回使い切る。40年越しで回収される伏線がいくつもあるのは、このシリーズが敗者を置き去りにしない体質を持っているからで、単に長く続いたからではない。

役者の実年齢が、そのまま素材になっている

スタローンは1作目の公開時に30歳、『炎の宿敵』の公開時には72歳になっていた。同じ人間が、同じ役を、42年ぶんの身体の変化ごと演じている。6作目が回想をほとんど使わずに30年を出せたのは、老いた身体を隠さずに撮ったからで、特殊メイクや若返り処理では代わりにならない。

同じことがドルフ・ラングレンにも起きている。1985年に質量と無表情だけで絶望感を作った男が、2018年には皺の刻まれた顔で30年ぶんの屈辱を出してくる。演技として作ったものと、実際に流れた時間が区別できなくなる。50年続いたシリーズにしか持てない材料で、ここだけは新しく作られる作品が真似できない。

こんな方におすすめ!

📊 全9作の一覧と、通すのにかかる時間

作品公開上映時間そのときのスタローン
ロッキー1976年119分30歳・無名
ロッキー21979年119分32歳・次が当たらない時期
ロッキー31982年99分35歳・『ランボー』と同年
ロッキー4/炎の友情1985年91分39歳・興行の頂点
ロッキー5/最後のドラマ1990年105分44歳・実子と共演
ロッキー・ザ・ファイナル2006年103分60歳・16年ぶりの復帰
クリード チャンプを継ぐ男2015年133分69歳・主役を託す
クリード 炎の宿敵2018年130分72歳・脚本にも参加
クリード 過去の逆襲2023年116分76歳・製作のみ

9本の合計は1,015分、16時間55分になる。1日2本のペースなら5日、週末2回でも収まる量だ。テレビシリーズを1クール追うのと変わらない。47年ぶんの物語が17時間弱で通せると考えると、シリーズものとしてはかなり軽い部類に入る。

出来にばらつきがあることは隠さずに書いておく。うさぎ亭が9本で最も低い点を付けたのは5作目で、次が4作目だ。5作目はトレーニングと主題歌というシリーズの武器を自分から封じたうえで、破産と父子と師弟を105分に詰め込んでいるので、どの線も説明が足りていない。4作目は勝つための算段が描かれず、アポロが倒れた責任の所在にも踏み込まないまま話が進む。この2本を「傑作が並んでいる」と言って差し出すつもりはない。

それでも9本を通してほしいと思うのは、いま刺さらない巻が、10年後に刺さる並びになっているからだ。5作目の落ち方が他人事に見える時期は確かにあるし、そのときは退屈な105分でしかない。ただ、この巻を通っていないと、のちにアドニスの指導を引き受けるまでロッキーが見せる長い迷いが、ただの気難しさに見えてしまう。同じように、4作目のあの試合を観ていないと、『炎の宿敵』でドラゴが背負っている30年に重さが出ない。弱いと感じた巻ほど、後ろの巻の効き目を作っている。

🔭 この先どうなるのか

『クリード』の4作目は、2026年8月時点で公開日が発表されていない。マイケル・B・ジョーダンが「いずれ必ずやる」と繰り返し語っている段階にとどまる。彼は監督と主演を兼ねる『トーマス・クラウン・アフェアー』を2027年3月に控えているので、動き出すとしてもその後になる。検索すると具体的な公開年が出てくることがあるが、いずれも出どころのある数字ではない。

一方で、映画以外の枝は具体的に動いている。ロッキーとクリードに登場するジムを舞台にした連続ドラマ『Delphi』が2025年5月に、アドニスの娘アマーラを主役に据えた企画が2025年12月に、それぞれPrime Videoで進行中であることが伝えられた。両者が同じ企画なのか別々に走っているのかは、公表されている情報からははっきりしない。女性を主役に据えるのは、このシリーズで初めてになる。

スタローンについては、書いておくべきことがひとつある。彼はロッキーの権利を持っていない。権利は早い段階でプロデューサーのアーウィン・ウィンクラー側に渡ったままで、2022年には「47年間コントロールしてきたのだから、残っているぶんの一部でも返してほしい」と公に求めている。9本目で彼が画面に出ていないのは、作風の相違に加えてこの対立が続いているためだと報じられた。製作には名を連ねているが、演じてはいない。50年ぶんの中身を書いた人が、その50年を所有していない。

ただ、彼自身の物語のほうは別の形で映画になる。2026年11月20日、本国で『I Play Rocky』が公開される。1976年に無名の俳優が『ロッキー』の脚本を書き、主演の座を勝ち取るまでを描く実話で、監督は『グリーンブック』のピーター・ファレリー、若き日のスタローンをアンソニー・イッポリトが演じる。製作はAmazon MGM Studios。日本公開日は本稿の執筆時点で発表されていない。本人は企画を把握しているが、製作には関わっていないと報じられている。

1作目の公開から、ちょうど50年にあたる。9本を追い終えたあとに、今度は今度はそれを書いた30歳の男がスクリーンに出てくるというのは、このシリーズの続きとしてはかなり出来すぎている。

😅 9本を通して残る欠点

敵役の内側が、ほとんど描かれない

1作目のアポロ、3作目のクラバー・ラング、4作目のドラゴ、6作目のディクソン。どの相手も強さの説明はあるのに、何を考えてリングに立っているかが画面に出てこない。役者の立ち姿と体格で成立させている状態が、9本のうち6本まで続く。敵は主人公を映すための鏡として置かれ、鏡の裏側は撮られない。

例外は3本ある。2作目は眠れない夜を過ごすアポロを数秒だけ映し、『炎の宿敵』はドラゴの30年を冒頭で丸ごと見せ、最新作は敵の18年を主人公と同じ密度で書いた。敵の内側が見えている巻は、試合の緊張がひと回り大きくなる。どちらが勝っても片方が本当に困る、という状態になるからだ。最新作はそれをやりすぎて、応援する先が試合の途中で分からなくなるという別の問題が出た。

主人公が動き出すまでが、毎回長い

落ちて、止まって、立ち上がる。この型を9本繰り返しているので、止まっている時間の退屈も9回繰り返される。2作目は生活が上向く場面が延々と続くし、3作目は99分の大半で主人公が浮ついたまま動かない。5作目に至っては、最後までリングに戻ってこない。積み上げがあるから復活が効くという理屈は理解できるが、まとめて観ると同じ待ち時間を何度も踏むことになる。

連続して観るなら、この停滞は仕様だと思って再生したほうがいい。1本ずつ間を空ければ気にならない箇所が、9本続けると累積で効いてくる。

前の作で立てた設定が、次で静かに消える

2作目であれだけ引っ張った目の負傷は、3作目では触れられない。5作目で引退の理由になった脳の損傷も、6作目では障害にならない。『チャンプを継ぐ男』でロッキーが抱えた病気は、『炎の宿敵』でほぼ触れられないまま進む。1本ずつ完結させる作りの副作用で、9本を一続きの年表として観る人ほど食らう。

もうひとつ、時間の流れも合わない。4作目の帰国から間を置かずに5作目が始まる建前になっているのに、息子の年齢だけが数年ぶん先へ進んでいる。実子を起用した都合が優先された結果で、笑い話として語られることが多いが、通しで観ていると計算が合わなくなる。

ここが残念…

  • 敵役の内面を描いた回が9本中3本しかなく、残りは役者の力で持たせている
  • 主人公が動き出すまでの停滞が、同じ型で9回繰り返される
  • 前作で立てた身体の設定や時系列が、次作で説明なく消えることがある

🗺️ 見る順番

公開順の一択でいい。並べ替えて得をする箇所は9本のどこにも無い。

  1. ロッキー(1976年・119分)
  2. ロッキー2(1979年・119分)
  3. ロッキー3(1982年・99分)
  4. ロッキー4/炎の友情(1985年・91分)
  5. ロッキー5/最後のドラマ(1990年・105分)
  6. ロッキー・ザ・ファイナル(2006年・103分)
  7. クリード チャンプを継ぐ男(2015年・133分)
  8. クリード 炎の宿敵(2018年・130分)
  9. クリード 過去の逆襲(2023年・116分)

この並びは、作品の年表であると同時に、ロッキーを演じた本人が30歳から72歳になっていく順番でもある。公開順で観ると、そちらの時間も一緒に流れる。

クリードから入ってもいいのか

入っていい。うさぎ亭も実際にその順番で入った。『チャンプを継ぐ男』は前提知識ゼロで成立するように作られていて、ロッキーが何者かを知らなくても、独りになった老人と身寄りのない若者の話として完結する。古い映像に抵抗がある人には、こちらから入るほうが敷居が低い。

ただし条件がひとつある。2作目の『炎の宿敵』に進む前に、『ロッキー4』だけは観ておいたほうがいい。あの続編の感情の山は、33年前の1本を通っているかどうかで高さが変わる。ドラゴ親子が背負っているものの出どころが4作目に全部置いてあるので、知らないまま観ると一番良い数分が素通りになる。クリードから入るなら「クリード1本目 → ロッキー4 → クリード2本目」が最短の折衷案で、そのあとで1作目に戻ればいい。

飛ばしていい作品はあるか

無い、というのが結論になる。候補に挙がるとすれば9本で最も点の低い5作目だが、これを抜くと後半が痩せる。教える側に回った男が最初につまずく話で、20年後にアドニスから「教えてくれ」と頼まれたロッキーが渋る理由が、ここにしか置かれていない。クリードまで行くつもりなら通しておいたほうがいい。

時間が取れず3本だけ選ぶなら、1作目・『ロッキー・ザ・ファイナル』・『クリード 炎の宿敵』を挙げる。始まり、区切り、そして継承したあとの到達点で、この3本なら47年の弧をおおまかになぞれる。ただし3本目を先に観ると4作目の見どころが減るので、その順番を選ぶなら『ロッキー4』を足して4本にしたほうが得をする。

同じ中身の別バージョンが2本ある

『ロッキー4』には、2021年にスタローン自身が再編集した『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』がある。賛否のあった家政婦ロボットの場面が一つ残らず削られ、未公開映像が大量に足されている版だ。国内の配信サービスには見当たらず、4K UHDのボックスに収録されている。『ロッキー・ザ・ファイナル』にも長尺版があり、こちらは2024年8月に出た4K UHDに収められた。本編より15分長く、日本語は字幕のみで吹替は付かない。

どちらも初見は配信にある劇場公開版でいい。再編集版は、通しで観終わって作り手の判断の変化を確かめたくなったときのものだ。特に4作目の再編集版は、40年前の自作を作者が撮り直しに近い形で直した記録として面白く、9本を追ったあとに観ると価値が変わる。

📺 どこで観られる?【2026年8月版】

サービスロッキー6作クリード1・2クリード 過去の逆襲無料体験
U-NEXT全作見放題見放題配信なし31日間
Hulu全作見放題見放題見放題なし
Amazon Prime Videoレンタルレンタルレンタル30日間
Netflix配信なし配信なし配信なしなし
Disney+配信なし配信なし配信なしなし

👉 各サービスの詳細な違いはVOD比較7社徹底解説を参照。

2026年8月25日時点の状況だ。まず押さえておきたいのは、9作を追加料金なしで通せるのはHuluだけという点になる。U-NEXTは8作目までを見放題で持っているが、最新作の『クリード 過去の逆襲』だけが見放題の対象から外れている。NetflixとDisney+は9作とも棚に置いていないため、その2社だけで済ませる道は用意されていない。

レンタルはAmazon Prime Video・Apple TV・Google Play・FODに並んでいて、9作とも1本ごとの課金になる。Amazon Prime Videoに9作の作品ページはあるが、どれもプライム会員の見放題には含まれない。配信状況は変動するため、最新情報は各サービスの公式サイトでも確認してほしい。

👉 1作目から順に行くなら、8作ぶんが無料期間の内側に収まるU-NEXTが入口になる。9本目まで途切れずに通したいならHuluの一択だ。

🧭 各作のレビューはこちら

9本ぶんの入口をここに並べておく。結末に触れた記述は個別のレビュー側にも置いていないので、未見の作品の項目を先に開いても問題ない。

ロッキー(1976年)

119分のうち、リングに立っている時間はごく短い。大半は寒い街で何者でもない男を眺めているだけなのに、その眺めていた時間が最後の試合の見え方を決めてしまう。100万ドルと28日という制約が、そのまま画面の嘘のなさになった稀な例でもある。うさぎ亭では8.2を付けた。

ロッキー 場面写真
出典:TMDB

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ロッキー2(1979年)

勝ったはずの王者が疑われ、負けたはずの男の生活が上向いていく。1作目が答えを出さずに置いた「あの夜は何だったのか」を、この119分が引き受ける。8.0という数字は単体の評価というより、前作とセットで初めて1本になる構造に対して付けたものだ。アポロの内側が描かれるのもここから。

ロッキー2 場面写真
出典:TMDB

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ロッキー3(1982年)

殴り合った相手が同じコーナーに立ち、砂浜を並んで走る。前2作の粘っこさを手放したぶん軽くなり、そのぶん遠くまで飛んだ99分だ。7.5という点は減点というより配分の話で、娯楽としての気持ちよさはシリーズで一番だと思っている。師の退場、最強の挑戦者、かつての敵との共闘と、転換点が3つ入っているのもこの巻。

ロッキー3 場面写真
出典:TMDB

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ロッキー4/炎の友情(1985年)

雪山の丸太と白い部屋の電極を、台詞なしで交互に映すだけで勝負が決まってしまう91分。粗を数えれば数えるほど出てくるのに、最終ラウンドでは前のめりになっている。7.0は完成度に対して付けた点で、熱の量だけなら9本のどれにも負けていない。『炎の宿敵』へ行く人は、ここを通らないと損をする。

ロッキー4 炎の友情 場面写真
出典:TMDB

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ロッキー5/最後のドラマ(1990年)

9本でいちばん褒めにくい1本で、6.2はその正直な数字になる。試合も主題歌もトレーニングも引っ込め、代わりに破産と父子と師弟を105分に詰めた。実際に観ると評判ほど酷くはなく、亡き師の回想を挙げる声だけは否定されているのを見たことがない。抜くと後半が痩せる、という一点で通す価値がある。

ロッキー5 最後のドラマ 場面写真
出典:TMDB

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ロッキー・ザ・ファイナル(2006年)

ロッキー本編6作でうさぎ亭が最も高い8.5を付けた1本。16年ぶんの空白を回想で埋めずに、60歳の身体そのものに載せてきた完結編だ。山場は試合ではなく、街灯の下で父が息子に話す数分にある。劇中で老いた男に向けられる視線と、当時のスタローンに向けられていた視線が完全に重なる巻でもある。

ロッキー・ザ・ファイナル 場面写真
出典:TMDB

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クリード チャンプを継ぐ男(2015年)

主人公の交代という、失敗しやすい仕事を正面から成功させた1本。ラウンドを止めずに撮る長回しは、リングの中に立たされているような画をつくる。血の繋がらない二人が練習を通して家族になっていく背骨があり、同時に、独りになっていた老人が生き直す話にもなっている。8.0はその二本立てに対して付けた。

クリード チャンプを継ぐ男 場面写真
出典:TMDB

👉 『クリード チャンプを継ぐ男』のレビューはこちら

クリード 炎の宿敵(2018年)

9本のうち、敵側の人生をいちばん長く見せた1本。33年前に敗れた男が、国からも家族からも見放された30年を背負って戻ってくる冒頭数分で、映画全体の温度が決まる。父と子の組み合わせが3つ重なる構成も効いていて、8.5は『ザ・ファイナル』と並ぶうさぎ亭のシリーズ最高点になった。試合後に二人が黙って走るだけの画が、いちばん長く残る。

クリード 炎の宿敵 キービジュアル
出典:TMDB

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クリード 過去の逆襲(2023年)

スタローンが画面に出てこない、9本で初めての1本。18年の服役を終えた幼馴染が奪われた時間を取りに来る話で、ジョナサン・メジャーズの芝居は観る理由になる。ただ、失うもののない側に座っているのが敵のほうなので、シリーズの燃料が敵役に渡ってしまった。7.5は、仕掛けの新しさと据わりの悪さを足して割った数字だ。

クリード 過去の逆襲 場面写真
出典:TMDB

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❓ よくある質問

ロッキーとクリードは全部で何作ある?

ロッキー6作とクリード3作で、あわせて9作になる。合計1,015分、16時間55分。1日2本のペースなら5日で通せる量だ。

どの順番で観ればいい?

公開順でいい。ロッキー1〜5、ロッキー・ザ・ファイナル、クリード1〜3の順に並んでいて、時系列の分岐や外伝は存在しない。並べ替えて得をする箇所は無い。

ロッキーを観ていなくてもクリードは楽しめる?

1本目の『チャンプを継ぐ男』は前提知識なしで成立する。引っかかるのは2本目からで、その回避策は本文の「見る順番」にまとめた。

評価がいちばん低いのはどれ?飛ばしていい?

『ロッキー5』で、うさぎ亭の点も9本で最低の6.2になった。それでも飛ばすのは勧めない。理由は本文の「見る順番」に書いた。

なぜ『クリード 過去の逆襲』にロッキーが出ていない?

スタローンが本作の方向性を自分の作風と違うものだと語って出演を見送ったことが報じられている。加えて、彼はロッキーの権利を持っておらず、プロデューサーのアーウィン・ウィンクラー側との対立が続いている。製作には名を連ねている。

クリードの4作目はいつ公開される?

未定だ。マイケル・B・ジョーダンが実現の意思を語っている段階にとどまり、彼自身が2027年3月公開予定の別作を控えている。出回っている公開年の数字に公式の裏づけは無い。

📝 まとめ

9本を公開順に通したあとに残るのは、勝敗の記憶ではない。一人の男が50年かけて同じ人物に自分を預け続けた記録だ。何者でもなかった30歳、次が当たらなかった数年、頂点で守りに入った時期、44歳で書いた喪失、60歳の再起、そして教える側に回ってから。そのどれもが、そのときのスタローンが実際に立っていた場所から書かれている。ボクシング映画のシリーズを追っているつもりで、一人の人間が年を取っていく過程に付き合っていたことになる。

だから観る順番は公開順がいい。作品の出来が上下する曲線としてではなく、人が年を重ねていく順番として並んでいるからだ。そして2026年11月、その9本を書いた男の話が別の映画として公開される。ここまで来ると、次の1本を待つ理由まで用意されている。スポーツものをもう少し掘るなら、スポーツ映画・アニメおすすめ10選から次を選んでほしい。