『バーフバリ 伝説誕生』完全版との違いは21分|見放題で観られるのは通常版

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先に答えを書く。『バーフバリ 伝説誕生』には2つの版がある。2017年4月8日に日本公開された通常版(インターナショナル版)が138分、翌2018年10月26日に公開された完全版が159分。差は21分で、ミュージカルシーン「マノハリ」などが戻っている。そのうえで観る側に効いてくるのは配信のほうだ。見放題で観られるのは138分の通常版だけで、完全版はレンタルしか道がない(2026年8月28日時点)。

私のオールタイムベストは、静かな映画ばかりだ。『EUREKA』『ソナチネ』『もののけ姫』——うさぎ亭で10点をつけてきたのは、どれも腰を据えて向き合う種類の映画になる。派手なアクションも、歌も踊りも、そこには一つも出てこない。

その並びに、滝から落ちても無傷の男が割り込んできた。インド映画はほとんど観たことがなく、『ムトゥ 踊るマハラジャ』のイメージだけを持っていた。それが評判の良さと予告編に釣られて劇場まで足を運び、いま自分でも意外な高評価をつけることになっている。敬遠していた理由が、そのまま全部この映画の武器になっていた。

📺 『バーフバリ 伝説誕生』はどこで見れる?【2026年8月版】

サービス配信状況無料体験
U-NEXT見放題31日間
Hulu見放題なし
Amazon Prime Videoレンタル30日間
Disney+配信なしなし
Netflix配信なしなし

👉 各サービスの詳細な違いはVOD比較7社徹底解説を参照。

2026年8月7日時点で、本作を見放題で観られるのはU-NEXTとHuluの2社になる。Amazon Prime Videoはレンタル配信のみで、プライム会員でも1本ごとに課金が必要だ。Netflix・Disney+では配信していない。配信状況は変動するため、最新情報は各サービスの公式サイトでも確認してほしい。

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先に『RRR』を観てここへ流れ着いたなら、『RRR』のレビューで同じ監督が7年後に何を積み増したのかを見てから戻ってくると、この138分の粗さまで愛せるようになる。

🎬 予告編

この作品を3行で

  • 滝の下で拾われた青年が、滝の上の王国と自分の血筋にたどり着く138分
  • 製作費約46億円、インド歴代興収1位、インド映画で初の全米興収TOP10入り
  • 一番いいところで次作に続く。これ1本では終わらない

作品情報

  • 作品名:バーフバリ 伝説誕生(原題:Baahubali: The Beginning)
  • 公開年:2015年(日本公開2017年)
  • 監督・脚本:S・S・ラージャマウリ
  • 主演:プラバース
  • 音楽:M・M・キーラヴァーニ
  • 上映時間:138分(国際版)/159分(完全版)
バーフバリ 伝説誕生 ポスター
出典:TMDB

📖 あらすじ・ネタバレなし

天まで届く巨大な滝の下に、赤ん坊が流れ着く。追っ手から子どもを守り、水面の上へ腕を伸ばしたまま力尽きた女性の手から、村人が拾い上げた命だった。シヴドゥと名づけられた彼は、幼い頃から滝の上の世界に取り憑かれている。何度落ちても登り、何年かけても登り、そして25年目にしてついに崖の上へ出る。

そこで待っていたのは、女戦士アヴァンティカと、暴君バラーラデーヴァが支配するマヒシュマティ王国だった。25年ものあいだ鎖につながれたままの王妃がいて、彼女を救い出そうとする一団がいる。やがてシヴドゥは、自分がこの国の王子バーフバリの血を引くことを知る。物語はそこから半世紀前へ遡り、蛮族の侵略から国を守った父の時代と、王位をめぐる争いの記録が始まる。

🎞 完全版との違い|21分で何が戻るのか

項目通常版完全版
上映時間138分159分
日本公開2017年4月8日2018年10月26日
追加分なし「マノハリ」など計21分
見放題U-NEXT・Huluなし
レンタルAmazon Prime VideoJ:COM STREAM・music.jp

完全版は本国で公開されたテルグ語版に近い形で、国際版を作るときに落とされた場面が戻っている。目玉は歌と踊りの「マノハリ」で、インド映画のミュージカルシーンを1曲まるごと浴びられる。物語の筋が変わるわけではないので、初見なら通常版で問題ない。138分でも十分に長く、テンポは通常版のほうが締まっている。

気に入ってから完全版へ進むのが順番として素直だ。ただし前述のとおり、完全版は見放題の対象になっていない。サブスクで流れているのは通常版で、完全版を観たければ単品レンタルになる。「サブスクに入ったのに完全版が無い」という取り違えが起きやすいのはこのためだ。

✨ この作品の魅力

ここがすごい!

  • 滝も宮殿も軍勢も、全部「ありえない大きさ」で押し切る物量
  • 悩まない・迷わない・負けない主人公が、今の時代に逆に効く
  • 敵部族の話す言語を、750単語と40の文法から一から作った
  • ラスト30分の合戦は、力任せではなく戦術で見せる

ツッコミどころが、途中から気にならなくなる

滝から落ちても無傷。牛を素手で受け止める。首を落とされた兵が数歩走る。右手にライオンの顔をつけた武器で敵を殴り、あげくその口で頭を咥える。挙げていけばきりがないし、文字にすると相当ばかばかしい。以前の私なら、この一つ一つをマイナス点として並べていた。

ミュージカルシーン、暑苦しい男たち、物理法則を無視したアクション。リアリティを削ぐ要素として、冷ややかに見ていたものばかりだ。

ところがこの映画は、それを画面の隅に置かない。ど真ん中に、ゴージャスに、逃げも隠れもせずに出してくる。しかも一つ一つの規模が違う。滝は見上げても頂上が見えず、宮殿は画面に収まらず、最終決戦の戦場には見渡す限り人が詰まっている。おかしいと思う気持ちより先に、物量のほうが到着する。

観ているうちに、指摘する側に立っているのが馬鹿らしくなってくる。この映画に整合性を要求するのは、花火大会に行って火薬の使い方に文句をつけるようなものだ。

細部の作り込みも同じ方向に振り切れている。敵部族カーラケーヤが話すキリキ語は、この映画のために一から作られた架空の言語だ。マダン・カールキが750単語と40の文法規則を用意し、辞書を撮影現場に持ち込んで俳優に指導した。不満を示すときと所有権を主張するときには吸着音を使う、という決まりまである。字幕を追うだけでは分からないが、あの意味不明な叫び声には体系がある。

自分で書いていて笑うのだが、いま並べた欠点は、どれもそのまま長所として書ける。判定が丸ごと反転する映画というのは、そう多くない。

悩まないヒーローが、今になって効く

バーフバリは葛藤しない。正しいと思ったことをやり、民に慕われ、負けない。人物としては単純で、内面の深さという意味では現代的な主人公に遠く及ばない。

だがこの20年、映画のヒーローはずっと内側で揺れてきた。スーパーマンは自分の存在意義を疑い、バットマンは暗い場所へ落ち、MCUのヒーローたちも上映時間の半分を自分の罪と向き合うことに使う。それを見慣れた目で、一切迷わない王を見せられると、こちらの構えが外される。

正義かどうかを議論しない。悩む前に動く。この分かりやすさが、2015年の映画を2026年になっても現役でいさせている。

前半と後半で、別の映画が始まる

138分の後半、かなりの尺が父バーフバリの時代の回想に充てられる。青年の冒険譚として始まった話が、途中から王位継承をめぐる政治劇へ変わる。1本で2本分を観たような満腹感があるのは、この構造のおかげだ。長さを感じないまま終わる理由でもある。

深いテーマ

この物語を動かしているのは剣ではなく、誓いだ。国母シヴァガミは私情を捨てて正しくあろうとし、その正しさが最悪の結果を招き寄せる。血のつながりと役割のどちらを取るのか、忠誠は誰に対して立てるものなのか。派手な合戦の下には、そういう問いが敷かれている。神話が神話として成立しているのは、この土台があるからだ。

🎭 印象的なシーン

この宣誓を法と心得よ!

国母シヴァガミが、瞬きもせずに言い放つ。この一行が、2作を通した縛りになる。彼女は正しくあろうとして、正しくない結論に到達してしまう。その過程があるから、この映画はただの英雄譚から半歩ずれた場所に立てている。

もう一つはラスト30分だ。巨大な布を風に乗せて敵陣の上へ運び、火を放って焼き払う。回転する刃をつけた馬を走らせて隊列を裂く。力任せに見えて、一つ一つが発明として撮られている。数万人を画面に並べるだけなら金でできるが、その並べた人間をどう倒すかまで考えているのが、この映画の合戦だ。

三つ目は、シヴドゥがアヴァンティカに仕掛けるアプローチのシーンになる。戦いながら彼女の防具を外し、髪をほどき、木の実の果汁で化粧まで施していく。映像としては見事だし、レビューでも「屈指の名シーン」として挙げられることが多い。ただ、私はここに素直に乗れなかった。理由は後で書く。

💭 視聴後の感情

上映中に「映画に求めていたのはこれだ」と思った。観終わってからではなく、観ている最中にだ。テンションが上がり、気持ちがそのまま熱くなっていくのが自分で分かった。

138分を長いと感じなかった。これは自分にとって珍しい。10点をつけてきた映画はどれも「長さを引き受けて観る」種類のもので、腰を据える構えが先に要る。この映画にはその構えが要らなかった。

そして劇場を出る頃には、あの三連呼を言いたくなっていた。日本の映画館なので、言ってはいないが。

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こんな方におすすめ!

😅 ここが惜しい

それでも満点にはしなかった。引っかかったのは3つある。

主人公が、途中から主人公でなくなる

シヴドゥは滝を登るまでが一番よくて、上に出たあとの見せ場は思ったより少ない。そして後半、父バーフバリの回想が始まると完全に画面を持っていかれる。父の話が面白ければ面白いほど、息子の存在が薄くなる。前半と後半で主役が入れ替わるのは構成上の仕掛けだとしても、この配分は座りが悪い。

これ1本では終わらない

一番いいところで、次作に続く。しかも引きが強烈で、エンドロールが流れる前に続編を探すことになる。ここで壁になるのが配信状況で、続編『バーフバリ 王の凱旋』は現在どのサービスでも見放題になっていない。誰もが「2作セットで観ろ」と言う作品なのに、2本目にだけ課金の関門がある。対処法は後の視聴ガイドにまとめた。

ヒロインの扱いが、今の目には古い

戦う女として登場したアヴァンティカが、男に化粧を施され、「女らしさ」を取り戻すかたちで恋に落ちる。映像は美しく、演出の完成度も高い。ただ、強さを手放すことが愛の証明として置かれている構図は、今の目で見るとどうしても引っかかる。時代劇なのだからという説明は成り立つけれど、乗れなかった事実のほうは消えない。

ここが残念…

  • 前半の主人公シヴドゥが、後半で存在感を失う
  • 1本で完結せず、続編は見放題配信がない
  • ヒロインが「女らしさ」を得ることで愛される構図

こんな方には向かないかも…

  • 物理法則や整合性が気になると、そこから戻ってこられない方
  • 1本で完結する映画を探している方(続編とセットで5時間コース)
  • 歌と踊りで物語が止まるのが苦手な方

サウンドトラック購入先

音楽はM・M・キーラヴァーニ。『RRR』の「ナートゥ・ナートゥ」でアカデミー賞歌曲賞を獲る7年前の仕事になる。

🎬 「バーフバリ 伝説誕生」が好きなら絶対見るべき3選

RRR

同じS・S・ラージャマウリが7年後に撮った一本。バーフバリで確立した「物理法則より画の気持ちよさを優先する」やり方を、実在の独立運動家二人に背負わせて撃ち込んでくる。こちらが神話の話なら、あちらは近代史の皮をかぶった大暴走だ。順番はどちらからでも成立する。

👉 映画「RRR」レビュー|少年ジャンプ×インド映画の最適解

少林サッカー

国も年代も違うが、「ばかばかしい設定を全力の物量でやり切ると、人は笑いながら心を動かされる」という一点で同じ場所に立っている。粗いCGすら勢いに変えてしまう強引さも共通だ。バーフバリで整合性を手放して楽しめた人なら、まず外さない。

👉 「少林サッカー」感想|バカ映画の最高峰が20年経っても愛される理由

ロード・オブ・ザ・リング

バーフバリの合戦を語るとき、必ず引き合いに出されるのがこの三部作だ。陣形を組み、地形を使い、数万の軍勢を破綻させずに画面へ収める。バーフバリのほうが荒唐無稽で、こちらのほうが重厚。同じ「大軍勢もの」でも快感の作り方が違うことが、観比べるとよく分かる。

📺 配信サービス別・視聴ガイド

『バーフバリ』2作を通しで観るなら、どのサブスクがおすすめ?

1作目だけなら、選択肢はU-NEXTとHuluの2つになる。どちらも見放題で、無料体験があるのはU-NEXT(31日間)のみ。これから加入するならU-NEXT一択でいい。

問題は2作目だ。『バーフバリ 王の凱旋』は2026年8月7日時点で、U-NEXT・Hulu・Netflix・Disney+のいずれでも見放題になっていない。観るにはAmazon Prime VideoかApple TVでレンタルするか、円盤を買うことになる。1作目を見放題で流し見できると思って始めると、ちょうど熱が最高潮になったところで足止めを食う。

現実的な進め方は2つある。①U-NEXTの無料体験で1作目を観て、続きが観たくなったら2作目だけレンタルする。②最初から円盤を買う。2026年6月に出た『バーフバリ エピック4K』のBlu-rayは、両作を監督自ら再編集して1本にまとめた225分版で、レンタルを2回繰り返すより結局こちらが早い。詳細は下のボックスに置いた。

視聴はこちらから

👉 U-NEXTの詳細レビューはこちら

📀 Blu-ray・円盤情報

2026年3月、両作を監督自ら再編集して1本にまとめた『バーフバリ エピック4K』が、全国の劇場で1週間だけ上映された。プラバースの来日もあったこの225分版が、同年6月にBlu-ray化されている。続編に見放題がない以上、2作を手元に置くならこれが一番まとまりがいい。特典ディスク付きの2枚組だ。

📝 まとめ

好みからすれば、この映画は私の反対側にある。物語には気になるところがいくつもあるし、10点をつけた作品と並べれば作りの粗さは隠れない。それでも高く評価している。理屈で説明できる部分は魅力の3つに書いたが、正直なところ、あの説明では足りていない気がしている。

静かな映画に10点をつけてきた人間が、滝から落ちても無傷の男に完全に持っていかれた。それが自分でも面白かった。これからも『EUREKA』『ソナチネ』のような映画を観続けるだろうが、劇場で気持ちが熱くなった記憶としては、こちらのほうがずっと新しい。手を出していないジャンルが、まだいくらでもあるということだ。

⭐ 作品の特徴

項目評価
映像・スケール★★★★★
アクション★★★★★
音楽★★★★☆
キャラクター★★★★☆
ストーリー★★★☆☆
1本での完結度★★☆☆☆

うさぎ亭的おすすめ度

⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐☆

8.8 / 10

整合性を入口に預けた瞬間から、この138分は無敵になる。