進撃の巨人3期は全22話|「難しい」と言われる王政編を解説

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「これはお前が始めた物語だろ」。このセリフが出てくるのは、全22話のかなり終盤だ。しかも前半の12話で、調査兵団はほとんど巨人と戦わない。戦う相手は人間だ。『進撃の巨人 3期』が「難しい」「退屈」と言われるのは、ほぼこの前半のせいだ。正直に書くと、私もこの12話をシリーズの中では少し退屈な部類だと思っている側だ。

それでも全22話を観終えたとき、進撃の巨人という物語は完璧に組み上がっていると思った。後半に入る50話「はじまりの街」から先が、前半12話に置かれたものを一つ残らず使い切りにくるからだ。この記事では、その前半で何が起きているのか、全22話が原作のどこからどこまでなのか、そしてどこで観られるのかをまとめて書く。

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王政編のように人と人が権力をめぐって争う話が嫌いではなかったなら、『銀河英雄伝説』は全110話それだけをやっている。

🎬 予告編

この作品を3行で

  • 前半12話は、敵の顔が人間に変わるための時間
  • 後半10話で、壁の中の物語がひとまず決着する
  • 全22話。原作13巻から22巻ぶんを一気に走る

作品情報

  • 作品名:進撃の巨人 Season3
  • 放送:Part.1 2018年7月23日〜10月15日/Part.2 2019年4月29日〜7月1日
  • 話数:全22話(通算 第38話〜第59話)
  • 制作:WIT STUDIO
  • 総監督:荒木哲郎/監督:肥塚正史
  • 音楽:澤野弘之
  • 原作:諫山創『進撃の巨人』(13巻〜22巻)
進撃の巨人 Season3 ポスター
出典:TMDB

📖 あらすじ・ネタバレなし

壁の外から巨人が来る。それがこの世界のルールだった。ところが3期の前半で、調査兵団に牙を剥くのは壁の内側にいる人間たちだ。中央憲兵、王政、そして「切り裂きケニー」と呼ばれる殺人鬼。エレンとヒストリアが連れ去られ、調査兵団は指名手配される。巨人と戦うための装備を持った兵士たちが、路地裏で人間相手に立体機動を使う羽目になる。

後半は一転して、5年前に奪われた故郷を取り返すウォール・マリア奪還作戦が始まる。エレンの生家の地下室に、父が遺したものがある。そこへ辿り着くために、調査兵団は全戦力を投じる。前半で明かされた事実と、後半で払う代償が噛み合ったとき、この物語がずっと何を隠していたのかが見えてくる。

✨ この作品の魅力

ここがすごい!

  • 前半12話で、戦う相手が巨人から人間に入れ替わる
  • 53話「完全試合」から55話「白夜」までの3話が異常な密度
  • 誰かを選べば誰かが選ばれない、という決断を正面から描く
  • ラストの1シーンが、後になって意味を変える

巨人と戦わない12話が、いちばん世界を動かしている

前半12話は、敵の顔が変わるための時間だ。

ここまでの『進撃の巨人』は、壁の外から来る化け物と戦う話だった。逃げ場のない恐怖はあっても、構図そのものは単純だ。人類が一方で、巨人が他方にいる。ところが3期の前半、調査兵団が向き合うのは同じ言葉を話し、同じ壁の中で暮らしてきた人間になる。彼らは巨人のように吠えない。会議室で決定し、書類で人を消す。

この12話で、視聴者は「壁の中は守るべき場所」という前提を降ろすことになる。守ろうとしていたものの内側に、守るに値しないものが混ざっていた。そう分かった状態で後半の戦争を観るから、同じ「奪還作戦」でも重さがまるで違う。前半を飛ばして後半だけ観ても、たぶん半分も刺さらない。

ここで実務的な話をひとつ挟んでおく。3期はPart.1(全12話・第38話〜第49話)Part.2(全10話・第50話〜第59話)に分かれていて、合わせて全22話だ。原作でいうと13巻から22巻の第90話までにあたる。10巻ぶんを22話で走っているので、体感の情報量が多いのは気のせいではない。「1回観ただけでは飲み込めなかった」という感想が出るのは、単純に密度の問題でもある。

ちなみにこの前半、殺伐としているわりに笑える場面がちょくちょく挟まる。リヴァイの部下いじりの語彙が妙に豊かで、緊張が続く回のちょうどいい息継ぎになっている。

53話「完全試合」から55話「白夜」の3話が、シリーズの頂点

後半の折り返しから、作品の温度が変わる。53話「完全試合」で戦況が絶望的になり、54話「勇者」で主要な面々が軒並み限界まで押し出され、55話「白夜」で誰も勝った気になれないまま話が着地する。この3話に、流して観られる場面は一つもない。

この畳みかけがすごいのは、派手だからではない。勝つために、勝てないほうの兵士たちに死んでこいと言う場面が含まれているからだ。命令する側にも逃げ道がない。それを承知で送り出す側の顔を、この作品はきちんと映す。作戦の説明が5分続いても退屈しないのは、その5分が全部これから死ぬ人間の話だからだ。

澤野弘之の音楽が最も効くのもこの区間だ。盛り上げるためではなく、音が入った瞬間に「ああ、この場面はもう戻れないんだな」と分かる使い方をしてくる。(誤解のないように書いておくと、楽しいシーズンではない。楽しくないのに面白い、というやつだ)

選ばなかったほうを、この作品は切り捨てない

3期の後半には、二人のうちどちらか一人しか助けられないという場面がある。どちらも失いたくない人間で、どちらにも生き残るべき理由がある。周囲の意見は割れ、その場は揉める。

この数分が優れているのは、選択そのものよりも、選んだ人間がその責任を引き受ける形で描かれているところだ。多数決でも運でもない。一人の男が決めて、決めた事実を自分の中に置いたまま先へ進む。あの重さを引き受ける役をやらせたら、この作品のあの男に勝てるキャラクターはそういない。

なお、いま並べた評価には日付が付いている。22話を観終えた直後、という日付だ。あとで一度、これが揺れる。

最後の数分は、あとから意味が変わる

22話の最後、調査兵団はずっと憧れていた景色の前に立つ。全員が同じものを見ている。ただし一人だけ、明らかに表情が違う

初見では、はしゃぐ仲間と温度差のある主人公、くらいにしか見えない。この数十秒がなぜ丁寧に撮られているのかは、続きを知ってから戻ってくると分かる。というより、知ってから見返すと、同じカットが別の場面に見える。この置き方は、相当先まで見えていた人間の手つきに見える。

深いテーマ

3期が扱っているのは、恐怖を管理する側の論理だ。誰かが人々から記憶と情報を取り上げ、代わりに「壁の外は絶望だ」という一枚の絵を渡す。それが100年続けば、疑うこと自体が罪になる。巨人はこの作品の恐怖の入り口にすぎない。奥に置かれているのは、真実を持っている者がそれを配給する構造だ。前半12話が政治劇になるのは、そこを描かないと後半の戦争が単なる撃ち合いになってしまうからだろう。

🎭 印象的なシーン

これはお前が始めた物語だろ

終盤に置かれた一言だ。誰が誰に言っているのかは書かない。ただ、この短い文が出てくる場面まで来ると、それまで22話ぶん積み上がってきたものが一点に集まる感覚がある。名台詞として消費されがちなセリフだが、直前の状況を知っていると、かなり酷なことを言っている。

もう一つ挙げるなら、二人のうち一人を選ぶ場面での、決めた側の表情だ。セリフは短く、演出も派手ではない。それでも、決断のあとに残る空気の重さがそのまま画面に出ている。ここを観るために3期を勧めてもいいくらいだ。

そして最終話。景色そのものより、それを見ている一人ひとりの顔をどれだけの時間映しているかに注目してほしい。いま観ると幸福な場面に見えるはずだ。

💭 視聴後の感情

22話を観終えた時点では、完璧な物語を見届けたつもりでいた。最高のアニメーションに最高のストーリーが乗り、その上に残酷な世界に抗う人々が立っている。必要なものが全部詰まっているシーズンだと思った。

その感想が変わったのは、その後を漫画で読んだときだ。ここで何があったかは書かない。ただ、あれだけ完璧に見えた22話が、先を知ると別の顔を見せてくる。同じ作品に二度驚かされたことになる。底が見えない、という言い方が一番近い。

だからこの3期を、シリーズの通過点として観るのはもったいない。ここは一度、完成形として観ておいていい場所だ。

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こんな方におすすめ!

😅 ここが惜しい

12話ぶんの退屈は、やはり12話ぶんある。では、無駄な話が一つもないのに、なぜ退屈なのか。

前半のテンポは、明確に落ちる

王政編が必要な話であることと、観ていて楽しいかどうかは別だ。会議、尋問、政治的な駆け引き、そして人間同士の追いかけっこ。巨人を待っている視聴者にとっては、明らかに違う番組が始まったように見える。「人回」と呼ばれて敬遠されるのも分かる。

加えて、この前半は情報の出方が早い。1話ごとに前提が更新されるので、ぼんやり観ていると人物と血縁と組織の関係が絡まる。実際、解説動画を横に置きながら観たという人がいるくらいだ。集中して観るぶんには問題ないが、ながら見には向かない。

作画には、見せ場と平場で差がある

立体機動の見せ場は文句なしだ。一方で、会話や回想のカットで線が減るという指摘は放送当時から少なくない。22話でこの物量なのだから、と個人的には受け止めているが、静止画で切り取られやすい弱点ではある。

ここが残念…

  • 前半12話はテンポが落ちる。巨人との戦闘目当てだと肩透かしになる
  • 情報量が多く、ながら見だと人物関係を見失いやすい
  • 作画の水準にムラがあるという指摘がある(会話・回想のカット)

こんな方には向かないかも…

  • 巨人とのアクションだけを目当てにしている人(前半12話はほぼ人間同士の争い)
  • ながら見で軽く消化したい人(前提が毎話更新される)

サウンドトラック購入先

澤野弘之による「進撃の巨人」Season3 オリジナルサウンドトラック(全31曲)。後半の戦闘で流れる曲は、単体で聴くと想像以上に静かな作りをしている。

🎬 「進撃の巨人 3期」が好きなら絶対見るべき3選

銀河英雄伝説

全110話、艦隊戦より会議と政争の時間のほうが長い。それでいて飽きさせないのは、民主主義の腐敗と専制君主の善政を同じ画面に並べ、どちらが正しいかを最後まで決めないからだ。3期の前半に手応えがあったなら走破できる。

👉 『銀河英雄伝説』のレビューはこちら

チ。―地球の運動について―

正しい答えを持っている側が、権力によって黙らされる。3期が「記憶を管理された100年」で描いたことを、こちらは15世紀ヨーロッパの天文学でやっている。真実を握り潰す側の理屈まで丁寧に描くところが似ている。

👉 『チ。―地球の運動について―』のレビューはこちら

MONSTER

最初から最後まで、敵は一人の人間だ。巨大な化け物も超能力も出てこないのに、74話かけて追う相手の輪郭がいつまでも掴めない。3期の前半で「人間が相手のほうが厄介だ」と感じた人に向いている。浦沢直樹の原作をほぼそのまま映像化した、長さを苦にさせない一本だ。

👉 『MONSTER』のレビューはこちら

📺 配信サービス別・視聴ガイド

『進撃の巨人』シリーズを通しで観るなら、どのサブスクがおすすめ?

3期だけを観るなら、主要5社どこでも見放題なので好きなサービスでいい。問題はシリーズを1期から通しで追う場合だ。進撃の巨人は1期・2期・3期・The Final Season(完結編を含む)と話数が多く、途中でサービスを乗り換えると探すだけで消耗する。

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1話あたりの体感は約24分。3期の22話だけなら、無料体験の期間で十分に走りきれる分量だ。

📚 原作情報

原作は諫山創『進撃の巨人』(講談社)。全34巻で完結済み(2021年6月9日発売の第34巻が最終巻)。3期が描いたのは13巻から22巻の第90話までで、原作全体のおよそ3分の2の地点にあたる。アニメと原作で大きな筋の違いはないので、続きが気になったらそのまま23巻から読める。1巻から読み直すと、3期で明かされたことが1巻の時点で仕込まれていたことに気づくはずだ。

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▶ 続きは『The Final Season』レビューへ


視点が敵側へ移り、物語が裏返っていく全28話

📚 進撃の巨人 全94話一気見ガイド


見る順番・全話数・配信まとめはこの1本で

📝 まとめ

『進撃の巨人 3期』は全22話。前半12話で敵が人間に変わり、後半10話で壁の中の物語がひとまず決着する。原作でいえば13巻から22巻ぶんを一気に走る密度で、「難しい」「1回では飲み込めない」という感想が出るのは自然なことだ。逆に言えば、腰を据えて観るだけの見返りは確実にある。

前半で止まっている人に伝えたいのは一つだけだ。Part.2の頭にあたる50話「はじまりの街」までは進んでほしい。そこから先は、止まる理由のほうがなくなる。私はこの22話をシリーズの完成形だと思って観終えて、そのあと先を知ってもう一度驚かされた。そういう作りになっている。

⭐ 作品の特徴

項目評価
ストーリー★★★★★
作画・アクション★★★★★
音楽★★★★★
テンポ★★★☆☆
初見での分かりやすさ★★★☆☆

うさぎ亭的おすすめ度

⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐☆☆

8.2 / 10

敵の顔が人間に変わる12話を抜けた先に、シリーズ最良の10話がある22話。