王様ランキングは後半つまらない?割れているのは脚本だけ

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絵で判断されると、この作品は取りこぼされる。丸みのある線に、頭身の低い人物。絵本を開いたような画面から始まるので、深夜アニメを探している人ほど手が止まる。実際に「絵柄で避けていた」「スルーしていた」という視聴者は珍しくない。そしてその人たちが観たあとに置いていく点数は、そろって高い。

筆者が観たのもだいぶ前になる。非常に面白かった、という感想がまず残っている。ただ、後半ですこしだれた。この記事はその両方を書く。まず配信から片づけよう。

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2026年8月29日時点で、上の4社が見放題。表に入れていないがHuluとdアニメストアでも見放題で観られるので、アニメを月額660円で追いたい人はそちらでもいい。ひとつ注意がいるのはAmazon Prime Videoで、ここは見放題の対象になっていない。プライム会員でも1話ごとに330円かかる。全23話をレンタルで揃えると、見放題サービスを1か月契約するより高くつく計算になる。配信状況は変動するため、最新情報は各サービスの公式サイトでも確認してほしい。

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ちなみに21話の戦闘を観て『進撃の巨人』を思い出す人は多い。作っているのが同じWIT STUDIOだからで、あの手つきの原型は『進撃の巨人 Season1』のほうにある。

🎬 予告編

この作品を3行で

  • 耳が聞こえず声も出せない、力もない王子が王を目指す
  • 絵本のような画面で進むのは、王位継承をめぐる陰謀劇
  • 全23話。話が進むほど、憎むべき相手が減っていく

作品情報

  • 作品名:王様ランキング
  • 放送:2021年10月15日〜2022年3月25日(フジテレビ「ノイタミナ」・全23話)
  • 原作:十日草輔(「マンガハック」連載)
  • アニメーション制作:WIT STUDIO
  • 監督:八田洋介/シリーズ構成:岸本卓/音楽:MAYUKO
王様ランキング ポスター
出典:TMDB

📖 あらすじ(ネタバレなし)

ボッス王国の第一王子ボッジは、耳が聞こえず、声も出せない。剣を持てば重さに負け、王子としての鍛錬にもついていけない。城下の民は彼を「無能な王子」と笑い、家臣たちは次期国王の器ではないと考えている。そんな彼が唯一の友として出会うのが、影の一族の生き残りであるカゲだ。カゲはボッジの手振りと表情から言葉を読み取れる、世界でただ一人の相手になる。

物語は、王位継承をめぐって城の内側が静かに動き出すところから加速する。継母である王妃ヒリング、弟のダイダ、剣の師である家臣たち。それぞれの思惑が交差し、ボッジは自分の力で外へ出ることを選ぶ。かわいらしい絵柄とは裏腹に、扱われるのは裏切り、呪い、復讐、そして親から子へ渡されてしまう歪みだ。深夜枠で放送されたのには理由がある。

✨ 『王様ランキング』の魅力

ここがすごい!

  • 話が進むほど、憎むべき相手が画面からいなくなっていく
  • 手話も字幕もなしに、表情と間だけで主人公の言葉が伝わる
  • 絵本の画面が、そのまま残酷な描写の緩衝材として働いている
  • King Gnu・Vaundy・yama・miletが並ぶ主題歌の贅沢さ

憎むべき相手が、毎週ひとりずつ減っていく

この作品の設計で一番おもしろいのはここだ。ふつうの物語は、進むほど敵の顔がはっきりしていく。誰が悪いのかが分かって、そいつを倒しにいく。『王様ランキング』はその逆をやる。嫌なやつだと思って見ていた人物の背景が明かされるたびに、憎めなくなっていく。

第2話でカゲの過去が語られる。第3話では、継子に冷たく当たる継母として登場したヒリングの見え方が変わる。この2話が異様に強い。どちらも新しい事件が起きるわけではなく、すでに見た場面の意味が裏返るだけだ。それだけで、視聴者が持っていた「こいつは敵」という札が1枚ずつ剥がれていく。

弟のダイダも、剣の師も、同じ順序で扱われる。10話を過ぎたあたりで、この物語には憎んでいい相手がほとんど残っていないことに気づく。悪役が改心するのではない。最初から悪役ではなかった、という順序で見せられる。前提が崩されるのはボッジの側ではなく、こちらの側だ。

ただ、この設計には裏側もある。敵がいなくなった物語は、後半で推進力を失いやすい。その話は後で書く。

「喋れない主人公」が、感情の増幅装置になっている

ボッジは耳が聞こえず、声も出せない。ここを「かわいそうな設定」として処理していないのが巧い。喋れないから、周囲がボッジに向ける侮蔑がそのまま画面に残る。言い返せない相手への嘲笑は、言い返せる相手へのそれよりずっと露骨に見える。

そして同じ理屈が、逆側でも働く。ボッジに向けられる好意もまた濃く映る。彼の内心は必ず一度カゲを経由してから外に出るので、二人が並んでいる時間そのものが関係の証明になっていく。家族より先に、友のほうが自分を見つけてくれた——その順番の切なさが、22話ぶん積み上がる。

深いテーマ

この物語で繰り返し出てくるのは「与えられなかったものを、人はどう扱うか」という問いだ。力を持たずに生まれた者、望んだ愛情を受け取れなかった者、他人の器を羨んだ者。誰もが何かを欠いた状態で置かれていて、その埋め方だけが違う。奪って埋めようとした者が敵役になり、そうしなかった者が主人公になる。ボッジが特別なのは強さではなく、欠けたままで他人を信じ続けられることだ。

無言を成立させている、表情と間の芝居

喋れない主人公を23話持たせるのは、実際にはかなり無茶な条件だ。手話が用意されているわけでも、心の声の字幕が出るわけでもない。使えるのは表情と、動きと、間だけ。それで伝わる。目の描き方だけで泣いているのが分かるし、うれしいときは体ごと跳ねるので言葉が要らない。

静止画の印象で語られがちだが、実際の画面はよく動く。

🎭 印象的なシーン

第2話・カゲの回想。お調子者の相棒として出てきた人物に、それまでの軽さと釣り合わない過去が置かれる。ここで作品の温度が確定する。以降、この番組は「見た目で判断すると必ず外れる」というルールで動くことになる。

2クール目のオープニング映像。割れた鏡の破片が集まっていく画がある。初見ではただの意匠に見えるのだが、本編がある地点まで進むと、これが仕掛けだったと分かる。OPを飛ばしていた人は戻って観てほしい。

第21話の戦闘。力を持たない主人公が、それでも立っている画をここまで説得力のある動きで見せられると、理屈より先に体が前のめりになる。

💭 観終わったあとに残るもの

この作品を観たあとは、しばらく人物の第一印象が信用できなくなる。画面に嫌なやつが出てきても「これは3話後に理由が説明されるやつだ」と身構えるようになる。物語の作法をひとつ植えつけられる感覚に近い。

もうひとつ残るのは音だ。King Gnuの「BOY」で始まって、Vaundyの「裸の勇者」に替わる。この2曲の距離が、そのままボッジの立ち位置の変化になっている。1クール目のオープニングは、彼が何も持っていないことを歌っていた。

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こんな方におすすめ!

😅 ここが惜しい|後半がだれると言われる理由

前半の武器が、後半は同じ型の繰り返しになる

「王様ランキング つまらない」で検索する人がいる。後半について言っているなら、その感覚には根拠がある。

前半の掘り下げが効いていたのは、出す位置と量が的確だったからだ。カゲの2話、ヒリングの3話。形式としては「新情報を後出しする」やり方なのだが、間隔が空いているうちは毎回きちんと驚ける。後半はこの型が、登場する人物ほぼ全員に適用される。実は事情があった、と回想が入り、こちらの見方が改まる。それが順番に繰り返される。

2クール目に入ると戦闘の比重も上がる。前半にあった、静かな場面と激しい場面の落差が薄れて、話の輪郭がぼやける。12話前後を境にそう感じた人は多いようで、「1クール目のほうが面白かった」という評価はかなりの数にのぼる。筆者もだれたと書いたのはこの区間だ。

加えて、物語の縦軸を担う人物の行動に、説明のつきにくい揺れが残る。ある人物を守ろうとしながら、同時に危険に晒すような選択をする。感情の振れ幅として読むこともできるが、通しで観ると引っかかりが残るのは確かだ。

ただ、ここははっきり書いておきたい。割れているのは脚本の話であって、作画ではない。後半に厳しい点をつけた人たちも、21話前後の作画は例外なく褒めている。「絵が雑になった」という失速ではないので、そこを心配して止まっているなら観てしまっていい。

ここが残念…

  • 後半は「実は事情があった」の回想が増え、掘り下げの型が繰り返しに見えてくる
  • 2クール目は戦闘の比重が上がり、前半にあった緩急が薄れる
  • 縦軸を担う人物の行動に、通しで観ると整理しきれない揺れが残る

こんな方には向かないかも…

  • キャラクターの造形が生理的に受け付けない人(ここは慣れで解決しないことがある)
  • 前半の静かな掘り下げが最後まで続くことを期待して観る人
  • 登場人物の事情に共感を求められる作りが苦手な人

サウンドトラック購入先

劇伴はMAYUKO。全91曲・2時間54分のサウンドトラックが配信されている。

🎬 「王様ランキング」が好きなら絶対見るべき3選

ウォーリー

ボッジの芝居が刺さったなら、こちらは同じ課題をもっと極端な条件でやっている。前半40分、主人公はほとんど言葉を持たない。それでも何を思っているかが全部分かる。言葉を取り上げられた主人公のほうが、感情がよく見えるという現象を、ピクサーが別のかたちで証明した一本だ。

👉 『ウォーリー』のレビューを読む

ヒックとドラゴン

バイキングの村で一番非力な少年が主人公。周囲が求める強さを最後まで手に入れないまま、それでも世界のほうを変えてしまう。ボッジが背負っているのと同じ主題を、90分で正面から通した作品だ。王様ランキングの後半に物足りなさが残った人ほど、こちらの畳み方は気持ちがいいはず。

👉 『ヒックとドラゴン』のレビューを読む

鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST

こちらは「掘り下げの型を最後まで維持できた場合」の到達点として挙げたい。敵側の事情を描いて憎めなくするやり口は本作と同じなのに、64話を一度もだれさせずに畳みきる。王様ランキングで物足りなかったのが構成の持久力だったなら、そこを完璧にやった作品がこれになる。欠けた体で始まる話という点でも重なっている。

👉 『鋼の錬金術師 FA』のレビューを読む

📺 配信サービス別・視聴ガイド

『王様ランキング』はどのサブスクで観るのがおすすめ?

まず押さえておきたいのは、Amazon Prime Videoは見放題の対象外だという点だ(2026年8月29日確認)。プライム会員でも1話330円のレンタルになるため、全23話を通しで観るつもりなら向かない。「プライムで観られるはず」と思って開いた人が引っかかるのはここだ。

見放題で観るなら選択肢は多い。31日間の無料体験があるU-NEXTが期間の長さで頭ひとつ抜けていて、23話なら無料期間内に完走できる。とにかく安く済ませたいなら月額550円のDMM TV(14日間無料)、アニメだけを長く追うなら月額660円のdアニメストアという選び方になる。すでにDisney+やNetflixに入っているなら、追加費用ゼロでそのまま観られる。

視聴はこちらから

📚 原作情報

原作は十日草輔の同名漫画。アニメ全23話は原作の第一部(1巻1話〜12巻155話)を映像化しており、続きを読むなら13巻からになる。13巻は第二部の開始巻で、ボッジとカゲが世界へ出ていくところから始まる。原作は現在も連載中で、既刊22巻(2026年6月12日発売の第22巻が最新)。

📱 電子でまとめ読みするならBOOK☆WALKERが初回購入50%コイン還元で安い。1巻だけ試すならRenta!(48時間100円〜)という手もある。

📝 まとめ

後半で評価が割れる作品ではある。ただ、その割れ方には理由があって、前半で提示した「見た目で判断すると外れる」という仕掛けが、後半は全員に等しく配られてしまう。驚きが手続きに変わってしまった。バトルの比重が増えるぶん、静けさで見せていた時間も減る。

それでも、この作品を人に勧めるのをためらう理由にはならない。喋れない王子を23話持たせきった芝居と、憎むべき相手が消えていく設計。この2つは他で代わりが利かない。絵柄で止まっている人には、せめて第3話まで観てから決めてほしい。あそこで決めても遅くない。

⭐ 作品の特徴

項目評価
ストーリー★★★★☆
作画★★★★★
キャラクター★★★★★
音楽★★★★★
テンポ★★★☆☆

うさぎ亭的おすすめ度

⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐☆☆

8.1 / 10

絵で敬遠されるのがもったいない。第3話まで観れば、この番組の正体が分かる。