『ジョン・ウィック:チャプター2』の銃はワインのように選ぶ|支度が一番おもしろい

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この映画の見どころは、出かける前にある。防弾になるようスーツを仕立て、地下の保管庫で銃を一丁ずつ試し、弾を選ぶ。店主は殺しの道具をワインのように薦めてくる。殺し屋の出勤前を、これだけ丁寧に見せた映画を他に知らない。

📣 BS12トゥエルビでの放送は10月11日(日)19時から。次の放送は17日(土)19時の『ジョン・ウィック:パラベラム』で、本作の結末からほとんど間を置かずに話が始まる。同じ週末にほかの局で流れる映画はテレビの映画放送予定から探せる。

『ジョン・ウィック:チャプター2』は前作から5日後の話だ。1作目が黙って通り過ぎた掟が、今作では順番に説明されていく。アクションの切れ味は上がっている。ただ、動機のほうは薄い。妻の形見の犬と車で走っていた男が、今回は昔自分が押した血判に引きずられて動く。肩入れのしやすさでいえば、前作に軍配が上がる。そのうえで、支度から始まるこの122分をどう楽しんだかを書く。

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今作から観ても筋は追えるが、掟の重さは1作目を通ってからのほうが効く。まだなら『ジョン・ウィック』から先に。あちらは犬と車だけで走り切る映画だ。

🎬 予告編

この作品を3行で

  • 殺しより、殺しに行く前の支度がおもしろい
  • 1作目が黙っていた掟が、今作で順番に明かされる
  • 動機は薄い。それでもアクションの切れ味は上がっている

作品情報

  • 作品名:ジョン・ウィック:チャプター2(John Wick: Chapter 2)
  • 公開年:2017年(日本公開は同年7月7日)
  • 監督:チャド・スタエルスキ
  • 脚本:デレク・コルスタッド
  • 出演:キアヌ・リーブス、コモン、ローレンス・フィッシュバーン、リッカルド・スカマルチョ、ルビー・ローズ、イアン・マクシェーン
  • 上映時間:122分
  • ジャンル:アクション/スリラー
ジョン・ウィック:チャプター2 ポスター
出典:TMDB

📖 5日後に、昔の借りが取り立てに来る(あらすじ・ネタバレなし)

前作の騒動から、まだ5日しか経っていない。奪われた愛車を自力で取り返したジョン・ウィックは、地下室に掘り出した道具をもう一度コンクリートで固め直し、静かな暮らしに戻ろうとする。そこへイタリアから、サンティーノ・ダントニオという男が訪ねてくる。手には、かつてジョンが押した血の誓いの印がある。

誓印を返せと言われた側に、断る権利はない。それが彼らの世界の決まりだからだ。拒んだジョンは家を失い、結局その依頼を引き受けることになる。仕事は片づく。だが、片づいたところからが長い。ローマでの逃走を経てニューヨークに戻った彼の首には賞金がかかり、街じゅうの同業者が一斉に顔を上げる。ここから先は追われる映画だ。

✨ 支度から始まる122分|この作品の魅力

ここがすごい!

  • 仕立て屋と武器商人で、出発前の期待値が最大になる
  • 誓印・金貨・コンチネンタルの決まりが、順番に開示される
  • 路上の演奏者も力士も、全員が同業者に見えてくる
  • 製作費4000万ドル。物量が上がってもアクションの手触りは荒れていない

殺しに行く前に、買い物がある

ローマに着いたジョンが最初に向かうのは仕立て屋だ。標的の屋敷は、その後でいい。生地を選び、寸法を測り、裏に防弾の層を入れてもらう。次に向かうのが武器商人のところで、ここが本作でいちばん多く語られている場面だと思う。店主は銃を一丁ずつ持ってきては、産地と特徴を説明する。軽いもの、近距離向きのもの、扱いに慣れが要るもの。その口ぶりと間の取り方はワインのソムリエそのもので、実際この人物に与えられた役名も「ソムリエ」だ。

極めつけが、ひと通り選び終えたあとのやり取りだ。食後に何か一品どうですか、という調子でナイフを勧めてくる。殺しの道具をコース料理として扱うという倒錯が、この数分に凝縮されている。観ているこちらは、まだ一発も撃たれていないのに、そのあと起きることへの期待でいっぱいになっている。

この構造は、ゲームで装備を整えてからボス部屋の扉を開けるときの感覚に近い。準備の時間そのものを見どころにしてしまったのが、このシリーズの発明だ。銃撃戦は他の映画にもある。だが、銃撃戦の前に買い物をきちんと見せる映画はほとんどない。前作にも道具を掘り出す場面はあったが、あれは地下室から過去を掘り返す私的な儀式だった。今作のそれは、仕事を請けたプロが業者を回る出勤前の手順になっている。同じ支度でも意味が違う。

1作目が黙っていた決まりが、順番に明かされる

前作を観たとき、物語より気になったのは世界の作りだった。殺し屋専用のホテルがあり、そこでは誰も手を出さない。死体を片づける業者が来る。金貨が当たり前のように流通している。理由は何も説明されない。あの説明しない潔さが1作目の魅力でもあったが、同時に「この世界はどうなっているのか」という宿題を観客に残していた。

今作はその宿題に、ひとつずつ答えていく。血判を押した誓印は断れないこと。コンチネンタル内で血を流せば、どんな理由があっても例外にはならないこと。金貨が通貨ではなく会員証に近い何かであること。街のホームレスを束ねる別の組織があること。そして、その上に主席連合という決定機関が乗っていること。世界を広げたのではなく、同じ場所を掘り下げたという感触が近い。

その地下組織の長として出てくるのがローレンス・フィッシュバーンで、ここは個人的に熱かった。キアヌとフィッシュバーンが同じ画面で向かい合う構図には、どうしたって『マトリックス』の記憶が乗ってくる。作品のなかで説明されるわけではない。だが、この2人が並ぶだけで18年ぶんの文脈が勝手に立ち上がる。勝手に盛り上がっているのはこちらだ。

街を歩いている全員が、同業者に見えてくる

賞金がかかった瞬間から、画面の見え方が変わる。路上でヴァイオリンを弾いている人も、ベンチでスマホを見ている人も、すれ違う大男も、全員がこちらを値踏みしている側に見えてくる。実際そのうちの何人かは動き出す。地下鉄の構内で、周囲に気づかれないまま近距離で撃ち合う場面があるのだが、あれは殺し合いというより職人同士の技比べに近い。

表の世界と裏の世界が同じ画面に同居している、という設定がここで効いてくる。日常の風景を崩さずに、その中だけで緊張を上げていく。群衆を増やさず、視線の向きだけで街ひとつを敵に回している。

そして、誰がどの決まりで動いているかが分かったうえで観る銃撃戦は、手数が前作と同じでも重さが違ってくる。地下鉄の構内でも終盤の展示空間でも、構えから撃ち終わりまでの一連が前作より明らかに整理されている。アクションそのものの満足度は、それだけで十分に高い。掟の話が面白いから観ていられるのではない。掟が分かったぶん、アクションがよく見えるという順番だ。

🎭 印象的なシーン

武器商人の場面は先に書いたので、ここでは残りを3つ挙げたい。まず、殺し合っていた2人がバーのカウンターで隣り合い、それぞれ静かに一杯やる場面。数分前まで本気で殺しにきていた相手と、何も起きないまま横並びで飲む。この世界の礼儀という以外に説明がない。理解できないと突き放す人がいるのも分かる。ただ、掟の映画として観ると、この数分がいちばん腑に落ちる。

次に、賞金の通知が一斉に飛ぶ場面。電話が鳴り、画面が光り、街のあちこちで人が顔を上げる。誰かが号令をかけるわけでもないのに、ニューヨーク全体が同時に切り替わる。静かなのに、ここがいちばん怖い。

ジョン・ウィック:チャプター2 人混みのなかで周囲をうかがうジョン
出典:TMDB

そして終盤、鏡と光で組まれた展示空間での決着。どれが本人でどれが像なのか、観ているこちらも判別できなくなる。追う側も追われる側も自分の姿に惑わされるという、理屈としては古典的な趣向だ。それでも、青と白の照明で埋めつくされたあの空間は、単純に見ていて気持ちがいい。ここだけは見世物として成立している。

💭 視聴後の感情

次を観ないと終われない。終盤、ジョンはこの世界で最も割に合わない選択をする。何をしたかは書かないが、あれをやった以上、次の映画が始まらないわけがない。引きとしては完璧だ。

ただ、そこで同時に引っかかったこともある。掟が一つ開くたびに、犬が一歩遠くなる。スケールは上がっているのに、最初に彼を動かしたものからは離れていく。素直に肩入れできるポイントが1本目より減っている気もしている。

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こんな方におすすめ!

😅 ここが惜しい……前半は静かで、動機は薄い

引っかかった点は3つ。うち2つは、前作と並べたときにだけ見えてくる。

前半の助走が長く、犬のぶんの息抜きが無い

ここが残念…

  • 冒頭のカーアクション以降、しばらく静かな時間が続く
  • 動機が「昔の約束」なので、前作ほど肩入れできない
  • 後半は息継ぎの場所がなく、濃さが最後まで落ちない

まず前半。冒頭で愛車を取り返す一連があって、そこは景気がいい。ところがその後、依頼を受けて支度を整えるまでの時間が思ったより長い。支度の場面自体は前述のとおり好きなのだが、アクションを期待して再生した人には、動き出すまでが静かに感じられるはずだ。ここで一度テンポが落ちる。

次に動機。前作は犬と車だった。妻が最後に残した犬を殺され、車を奪われた男が怒り狂う。理屈がいらない。今作のジョンを動かすのは、過去に自分が押した血判であり、断れない決まりであり、巻き込まれた立場だ。筋は通っている。ただ、通っているだけで、胸ぐらは掴まれない。感情移入という一点では前作のほうが上だった。

3つ目は、息継ぎの場所がないこと。前作には犬がいて、あの存在が緊張の合間をやわらげていた。今作にその役はほとんど回ってこない。後半は追われ続けるので、画面の張りつめ方が最後まで落ちない。濃さを喜ぶ人にはご褒美だが、途中で一度休みたくなる人もいると思う。

それでも、この映画は好きだと言える。あの買い物の時間と、掟が開いていく感触。その2つで十分に元気が出た。

こんな方には向かないかも…

  • 主人公に感情移入して観たい人(今作の動機は理屈寄り)
  • 頭部への銃撃が延々と続く画が苦手な人(R15+指定作品)
  • 1作目を未見の人(掟の重みが伝わりにくい)

サウンドトラック購入先

音楽はタイラー・ベイツとジョエル・J・リチャード。全23曲。地下のクラブと鏡の展示空間は、この電子音ごと記憶に残る。

🎬 「ジョン・ウィック:チャプター2」が好きなら絶対見るべき3選

同じガンアクションを並べても仕方がないので、今作で面白かった要素を軸に3本選んだ。道具の説明が見せ場になる構造、掟に巻き込まれる立場、暴力を様式に変える手つき。それぞれ角度を変えて当ててある。

キングスマン

支度の場面が好きだったなら、これは同族だ。ロンドンの高級仕立て屋が表の顔で、スーツも靴も傘も武器になっている。道具の説明を受ける時間が、そのまま見せ場になっているという構造が、武器商人の数分とまったく同じ快楽を突いてくる。ジョン・ウィックが黙って支度するのに対し、こちらは新人に手取り足取り説明してくれるぶん、装備の面白さが分かりやすい。血の量と悪趣味さは向こうのほうが上だ。

人狼 JIN-ROH

掟に巻き込まれる話をもう一段重くすると、これになる。組織の規則が人を守るためではなく、人を使い潰すために存在している。ジョン・ウィックの世界では決まりごとが様式美として機能していたが、こちらでは同じ構造が逃げ場のない罠として描かれる。今作の動機に物足りなさを感じた人ほど刺さるはずだ。銃の重さと装填の音の生々しさも、シリーズが好きなら確実に気に入る。

👉 『人狼 JIN-ROH』のレビューはこちら

ベイビー・ドライバー

仕事の前に曲を選ぶところから始まる犯罪映画。銃撃も逃走も音楽の拍に合わせて組まれていて、暴力がダンスの一種として処理されている。ジョン・ウィックが動作の手順で様式を作っているのに対し、こちらはリズムで作る。支度から本番までを一本の流れとして見せる感覚が近いので、あの数分が好きだった人は高い確率で気に入る。

👉 『ベイビー・ドライバー』のレビューはこちら

📺 配信サービス別・視聴ガイド

『ジョン・ウィック:チャプター2』はどのサブスクで観るのがおすすめ?

本作は5社で見放題なので、どこに入っていても観られる可能性が高い。そのうえで選ぶなら基準は2つ。シリーズを通しで観るのか、この1本だけ観るのかだ。

通しで観るならU-NEXTが速い。31日間の無料体験があり、1作目も同じ場所にある。2本続けて観ても4時間弱なので、無料期間中に十分収まる。この1本だけでいいなら、すでに入っているサービスで観ればいい。Amazonプライム・ビデオは年会費の中に含まれるので、プライム会員なら追加の課金は発生しない。DMM TVは14日間の無料体験つきで月額も安いが、洋画の在庫はアニメほど厚くないので、他にも観たい洋画があるかを先に確かめておくといい。

📀 Blu-ray・円盤情報

原作のないオリジナル作品なので、手元に置くなら円盤になる。4K UHDと本編Blu-ray、特典Blu-rayの3枚組には、キアヌ本人と監督による音声解説、削除シーン、メイキングが入っている。銃の構えとリロードの作り込みが評価されている作品なので、解説を聴きながらの2周目は相性がいい。

▶ 続きは『パラベラム』レビューへ


追放まで1時間。倒し方の種類がいちばん多い3作目

📚 ジョン・ウィックの見る順番と全6本の配信


本編4作とスピンオフ2本の時系列、5作目の今までこの1本で

📝 まとめ

『ジョン・ウィック:チャプター2』は、世界の決まりが開いていく映画として観るといちばん楽しい。金貨にも誓印にもコンチネンタルの掟にも、今作で理由がつく。そのうえで支度の数分があり、街ひとつが敵に回る後半がある。動作の作り込みは前作から一段細かくなっていて、122分の見応えは十分にあった。

引っかかるのは、彼を動かしているものが遠くなっていく点だ。犬と車で走っていた男は、もう決まりごとの中にいる。スケールが上がるほど、最初の怒りからは離れていく。それでも次が観たくなるのだから、この映画は仕事をしている。1作目を観たなら、間を空けずに続けて観てほしい。

⭐ 作品の特徴

評価項目評価ひとこと
アクション★★★★★構えもリロードも作り込みが細かい
世界観★★★★★掟と金貨の設定がここで開く
ストーリー★★☆☆☆動機は弱く、巻き込まれ型
テンポ★★★☆☆前半は助走、後半は休みなし
音楽★★★★☆電子音が画面の温度を決めている

うさぎ亭的おすすめ度

⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐☆☆☆

7.0 / 10

支度が最高で、動機が薄い。1作目の直後に、続けて観てほしい一本

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